「自分には無理」とすぐあきらめてしまう子どもに効果的な「すごい声かけ」

出産・子育て

更新日:2021/6/29

子どもの心を強くする すごい声かけ
『子どもの心を強くする すごい声かけ』(足立啓美/主婦の友社)

 テストで失敗したり、大事な試合でミスしたり、お友だちと喧嘩したり…子どもたちの心というのはなにかとダメージをうけて傷つきやすいもの。そんなとき親はやさしく言葉をかけてあげたいと思うものだが(さらに、できればプラスになる方向で)、励ましたつもりが「うるさいなあ。自分には無理なの!」と逆ギレされてしまうこともあり、デリケートな心に寄り添うのに難しさを感じている方もいるかもしれない。

 だが、『子どもの心を強くする すごい声かけ』(足立啓美/主婦の友社)によれば、実はこうしたネガティブな感情を抱いたときこそ、強くしなやかな心を育てる重要なターニングポイントなのだとか。しかもそうした心を育むためには、親の適切な「声かけ」が大きな力を持つという。

「ストレスに弱い、自信がない、すぐあきらめる子でも大丈夫! 心が弱いと思える子ほど、親の声かけでどんどん変わります」と、著者であるポジティブ心理学の専門家・足立啓美先生。ネガティブ感情はなんとなくマイナスと捉えられがちだが、たとえば「怒り」は大切なものが侵害されたサイン、「落ち込み」は身体を休めて心身を守る必要があるサインであり、自分の命を守るために存在しているものなのだ。

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 そのため親は子どもが抱いたネガティブ感情を否定せず、「(それを)どう受け止め、どう声かけをするか」に注意するといい。その結果次第で子どもの「レジリエンス」に差が生まれ、ポジティブに転換もできるという。

 レジリエンス(resilience)とは英語で「回復力」「復元力」という意味で、逆境や困難で折れたりへこんだりしても、そこから立ち直るしなやかな心の強さのこと。子どもたちの社会に生きづらさが増す現在、こうした心の強さを育てることが大事だと考えられており(実際、世界各国の名門校ではレジリエンス教育が盛んだという)、それが「親の声かけ」でもできるというのだから注目だろう。

 たとえばお子さんが新しいことに挑戦する前から「どうせ無理だから…」とあきらめたような様子でいるとき、親は「できるよ! がんばれ!」となんとか背中を押そうとするもの。だが高すぎるハードルには慎重な子ほど萎縮してしまうものであり、そんなときは「今、できることをやってみようよ!」「まずはひとつやってみよう」と、「その子が『それならできそう』と感じられる最初の一歩を設定してあげること」が大事だと著者はいう。

 子どもが「自分には無理」と思ってしまうのは、過去の自分の失敗や繰り返し周囲から受ける「どうせあなたには無理だからやめておきなさい」とのメッセージに、あらかじめ挑戦する気力を失ってしまう「学習性無力感」の状況に陥ってしまっているためだ。そこから引き上げるには「失敗することはあなたの能力不足のせいではない」と伝えることが第一歩であり、そのためまずは目標を小さく設定してそれをクリアできたら「わー、できたね!」と声をかけてあげるといい。それを繰り返すことで少しずつ成功体験が積み上がり、次第に「自分にもできるかもしれない」と前向きに捉える力とやる気が育っていくという。

 レジリエンスを育てることは長期的に子どもの心をストレスやうつから守る「心のワクチン」になるといわれており、それが親にも育てられるならうれしいことだ。本書にはこのほかにも具体的な声かけのコツやリラックス方法がいろいろ紹介されているのでぜひ参考にしてほしい。

「予測不能な時代だからこそ、逆境に負けない力は武器になる」と著者。子どもの幸せな未来のために、親として読んでおきたい1冊だ。

文=荒井理恵

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