【ネタバレあり】『呪術廻戦』『左ききのエレン』…キャラたちの信頼関係に胸が熱くなるマンガ5選

マンガ

公開日:2021/6/26

※本記事にはネタバレが含まれますので、ご了承の上、お読みください。

 友人や家族、仕事仲間、恋人など、良好な人間関係を築くために欠かせないのが、相手を信じて頼ることを示す“信頼”。漫画や小説にも、キャラクター同士の信頼関係を描いたシーンや信頼が芽生える瞬間が多数登場します。そこで、読者の胸を打つ、キャラ同士の “信頼”を描いたシーンを5つご紹介します。なお、ネタバレを含むのでご注意ください。

虎杖悠二+釘崎野薔薇
『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)

『呪術廻戦』(芥見下々/集英社)

 人間たちの負の感情から生まれた呪いと、それを祓う呪術師たちの戦いを描く大人気漫画『呪術廻戦』にも、数多くの信頼シーンが登場します。特級呪物の両面宿儺の指を取り込んだ主人公・虎杖悠二(いたどりゆうじ)は、対呪い専門機関の東京都立呪術高等専門学校に通う1年生。同級生の伏黒恵(ふしぐろめぐみ)、釘崎野薔薇(くぎさきのばら)とは出会って日は浅いものの、任務を通して切磋琢磨する間柄です。

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 3人そろって任務に就いた「起首雷同編」では、呪霊が関わっているとされる3件の刺殺事件の調査に向かいました。一連の事件の犯人は“宿儺の指”を取り込んだ特級呪霊。そのため、3人は宿儺の指を回収しに現れた敵、呪胎九相図の壊相(えそう)、血塗(けちず)と鉢合わせてしまいます。

 伏黒に特級呪霊の対処を任せた虎杖と釘崎は、壊相と血塗と戦うことに。虎杖と釘崎は、“体内に取り込んだ者の体を蝕む”という壊相の血液から逃れるために走り出します。しかし釘崎は、高い身体能力を持つ虎杖のスピードについていけず、壊相の血が釘崎の髪をかすめる……その緊張の瞬間、虎杖は釘崎を抱え上げて全力疾走! 虎杖は彼女を抱えたまま血の射程距離外まで突っ走ります。このシーンで交わされたふたりの会話がこちら。

釘崎「……背中は任せろ」
虎杖「頼んだ」

 釘崎は虎杖に命を預け、虎杖は釘崎に背中を預けた。言葉は少ないですが、まさにふたりの信頼関係が表れているシーンではないでしょうか。

イザベラ・バード+伊藤鶴吉
『ふしぎの国のバード』(佐々大河/KADOKAWA)

『ふしぎの国のバード』(佐々大河/KADOKAWA)

『イザベラ・バードの日本紀行』などで知られる、明治期に活躍した英国の女性冒険家、イザベラ・バードの旅を漫画化した本作。バードが触れる日本の文化と、蝦夷を目指す過酷な道程が見どころですが、通訳ガイドとして彼女の旅に同行する伊藤鶴吉とバードが徐々に信頼を寄せていくストーリーからも目が離せません。

 旅を始める前、バードは「たしかな英語力と日本の文化に精通した通訳ガイド」を探していましたが、当時の日本には高い英語力を持つ日本人は皆無。日本を旅する難しさを実感した彼女の前に現れたのが、流暢な英語を話す青年・伊藤鶴吉でした。彼は幼い頃から西洋人のボーイをしていたため英語が話せるそうですが、前の雇い主からの紹介状はなく、身分を証明するものすら持っていない状態。

 バードは身元不明者を雇うリスクも考慮し、信頼できるかどうかわからないとしつつも「命がけの旅になるかもしれませんが、ついてこれますか?」と伊藤に問います。すると「……問題ありません。いかなる地であろうとぼくはぼくの仕事をするだけです」と答えた伊藤。彼の仕事に対する姿勢に心を動かし、バードは彼を正式に採用しました。

 旅の道中、伊藤は通訳ガイドとして仕事を全うし、幾度となく彼女のピンチを救います。一方のバードも日本に住む英国人が伊藤を“猿”呼ばわりすれば、代わりに頭を下げて同胞の非礼を詫びるなど、伊藤との対等な関係を築いていきます。そんなふたりの信頼関係が表れているのが、とても大切な「旅行免状(パスポート)」を伊藤に預けるシーンです。

「この旅行免状は、今の私にとって命の次に大切なものなの。伊藤、これを渡す以上、あなたと私は一蓮托生(※)よ。その覚悟があれば受け取って欲しいの」

(※)結果のよしあしにかかわらず、仲間として行動・運命を共にすること。

 そして伊藤は一晩ほとんど寝ずに思案して彼女のパスポートを預かる決意をしました。長く過酷な旅において、信頼関係は必要不可欠なのです。

杉元佐一+アシ(リ)パ+白石由竹
『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)

『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)

 北海道を舞台に壮絶な金塊争奪戦を描く、冒険活劇『ゴールデンカムイ』。敵味方が頻繁に入れ替わり、裏切り上等な人間関係が同作の特徴ですが、主人公の杉元佐一とアイヌの少女・アシ(リ)パ、金塊の在り処を示す刺青を持つ囚人・白石由竹の3人は、物語の初期から共に死線をくぐり抜け、かけがえのない仲間になりました。

 そんななか、主要登場人物が一堂に会して大乱闘に発展した網走監獄決戦では、杉元が頭を銃で撃たれて生死不明に。途中から旅に同行していた兵士の尾形百之助は、アシ(リ)パに「杉元は死んだ」と話し、戦闘の混乱のなか彼女を連れ出します。そして、網走監獄で杉元と別れる前に「アシリパさんを頼むぞ、シライシ」と彼女を託された白石も、アシ(リ)パたちとともに網走監獄を脱出。刺青の暗号を解くために一路樺太へと向かいます。

 一方の杉元は銃弾が脳をかすめながら一命をとりとめ、敵対している北海道第七師団のメンバーと一時的に手を組み、アシ(リ)パを追います。

 樺太に到着した杉元たちが出会ったのは刺青の囚人・岩息舞治。戦闘狂の悲しきモンスター岩息と杉元は激しいひと悶着のすえ、なぜか互いに心を通わせる展開に。その後、岩息は白石とアシ(リ)パらしき少女が話しているのを見た、と杉元に告げます。岩息がカフェで盗み聞きしたというふたりの会話から、3人の強い絆が感じられます。

白石「杉元のことだけどさぁ…あいつまだ生きてんじゃねえかなぁ? 根拠は全く無いんだけど、俺はあんな野郎が簡単に死ぬとは思えないんだよ」
アシ(リ)パ「何言ってるんだ!? シライシ、杉元が死んでるわけないだろッ あいつは「不死身の杉元」だぞ。きっと生きている」

 不死身の男の異名をとる杉元佐一。何度も九死に一生を得てきた彼を間近で見てきた白石とアシ(リ)パでなければ、彼の存命を信じられなかったかもしれません。杉元のみならず多くの読者が再会を願った一幕です。何より、女好き、博打打ち、ヒロイン級のドジっ子など、出会った頃は少々頼りなかったあの白石が杉元との約束を守ってアシ(リ)パを支える姿も印象的でした。

源誠二+上杉
『ハコヅメ』(泰三子/講談社)

『ハコヅメ』(泰三子/講談社)

『ハコヅメ』は、元警察官の作者が“リアルな交番女子”の日々を描くお仕事漫画。架空の所轄・町山警察署に勤務する警察官たちが農道を歩く牛を家に帰したり、業務に追われて万年睡眠不足だったりと、いろんな意味で体を張って市民を守る姿に親近感が湧く作品です。

 主人公は交番勤務の新人警官・川合麻依ですが、今回紹介するのは町山署刑事課のエース・源誠二と、彼を慕う留置係の上杉のふたり。留置係は、刑事が取調べをする際に留置所から被疑者を連れてきたり、被疑者の体調を管理したり、身の回りの世話をしたりするのが仕事。地味な業務なので、配属された当初はショックを受けていた上杉ですが、源の巧みな取調べを間近で見るうちに彼の手腕に感激し「多分俺は、あの人の仕事の役に立つためならなんでもできる」と語ります。一方の源も、マジメに仕事に取り組む上杉を労い、こう言葉をかけます。

「被疑者が留置場で体調崩したり、精神的にまいっちゃったりすれば当然まともな取り調べはできないし。上杉は仕事が丁寧だから、おまえの勤務日は被疑者の機嫌もいいんだよ。俺も山田も上杉を職場で見ると内心ラッキーって思ってるもん」

 憧れの人から仕事をほめられるのは、とてもうれしいですよね。あらゆる仕事が一人ひとりの信頼で成り立っていることを実感するシーンでした。7月からは実写ドラマの放送も控えているので、地上波でも源と上杉の仕事ぶりが楽しめるかもしれません。

山岸エレン+加藤さゆり
『左ききのエレン』(漫画:nifuni、原作:かっぴー/集英社)

『左ききのエレン』(漫画:nifuni、原作:かっぴー/集英社)

 原作者のかっぴー先生が投稿サイト「cakes」に発表した漫画が話題になり、現在はマンガアプリ「少年ジャンプ+」でリメイク版も連載されている『左ききのエレン』。同作は、広告代理店で働くデザイナー・朝倉光一を中心に、彼を取り巻くクリエイターたちの仕事と葛藤を描く群像劇です。

 主人公の光一の青臭さや成長も見どころですが、ここでは彼の“ライバル”で非凡な絵の才能を持つ山岸エレンと、彼女を支えるアートプロデューサー・加藤さゆりのふたりに注目しました。

 かつてエレンとさゆりは同じ小学校に通う幼馴染でしたが、エレンの父が自殺したことをきっかけにケンカをしたまま、さゆりは親の仕事の都合でアメリカに転居。一方のエレンは、父の死後、絵を描くのをやめてしまいます。それから7年後に帰国したさゆりは、高校でエレンと再会しますが、昔のような関係には戻れませんでした。友人を作らず絵も描かず孤独に過ごすエレンと、将来を見据えて人付き合いをする打算的なさゆり。正反対のふたりの人生はもう交わらないはずでした。

 しかし、同じ高校に通う光一に触発され、エレンは再び絵を描くようになり、東京芸術大学に現役合格。さゆりは光一と同じ美大に進学し、大学入学後に交際をスタートしますが、後に破局してしまいます。

 半ば自暴自棄になったさゆりは、美大生を応援する情報誌を立ち上げ、取材と称して3年ぶりにエレンにコンタクトを取ります。

 他人とのコミュニケーションが苦手なエレンに対し、さゆりは「世に出られず終わってしまう才能を救いたい…私は声なき全ての才能を発掘する力になりたい!」と話しますが、エレンはその言葉のウソを見抜きます。

 長い間向き合えなかったふたりが本音でぶつかり合うシーンも見ものですが、エレンがさゆりに放ったあるセリフから、彼女に対する“信頼”がうかがえます。

エレン「さゆり、お前さっきいらねーって言ったよな…じゃあ私にくれ」
さゆり「は…? 何の話?」
エレン「お前の人生…私にくれよ。私のマネージャーになって」
さゆり「……なんで嫌いな女にそんな事頼むの?」
エレン「別にお前じゃなくてもいい。誰だっていい。戦略が立てられてアートに詳しくて、英語がペラペラで、私の事よく知ってるヤツなら誰だっていい」
さゆり「……ハァ…バカじゃない? そんな都合のいい人、他に現れるワケ無いでしょ。漫画じゃないんだから」

 ため息をつきながらエレンのプロポーズ(?)を受けるさゆり……反目し合っていたふたりが手を組む姿にグッときます。その後、エレンとさゆりはアメリカに渡り、現代アート界を席巻していくベストパートナーへと成長します。また、生活力がないエレンの世話をつい焼いてしまうさゆりなど、ふたりの関係がさらに深まっていく様子もかわいい。

 極限の状況でこそ発揮される信頼や、仕事に欠かせない信頼関係……どれも胸がアツくなりますね。彼らのアツい信頼を感じれば、梅雨のジメジメも吹き飛ばせるかも?

文=とみたまゆり

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