小さな石に秘められた壮大な自然界のロマン…冒険気分を味わえる今話題の「鉱物採集マンガ」

マンガ

公開日:2021/8/10

瑠璃の宝石
『瑠璃の宝石』(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

 今、鉱物採集マンガ『瑠璃の宝石』(渋谷圭一郎/KADOKAWA)が、大きな話題を呼んでいる。作者・渋谷圭一郎さんは、リケジョの部活マンガ『大科学少女』でデビュー。鉱物学を修めた渋谷さんの確かな知見に基づくこのマンガは、読んでいてとにかくワクワクさせられるのだ。水晶、ガーネット、砂金、蛍石…。小さな石には、実は自然界の壮大なロマンが秘められている。どうしてこの石はこの場所にあるのか。自然は一体どれくらいの月日をかけてこの美しい鉱物を生み出したのか。元々の鉱物好きはもちろんのこと、「鉱物採集って何?」という人もこの作品に心躍らされるに違いない。

 主人公は、宝石やアクセサリーが好きなごく普通の女子高生・ルリ。彼女はある時、水晶のペンダントが欲しくて、お母さんにお小遣いの前借りをお願いしたのだが、あえなく却下されてしまった。お母さんによれば、昔おじいちゃんが山菜採りに行っていた山で、水晶がゴロゴロ採れたのだという。「山菜採るついでに見つかるなら私にだって採れるはず」と、さっそく山に向かったルリだが、服装は半袖にミニスカート、手に園芸用のシャベルという軽装備。鉱物の採集なんてしたことのないルリは、山の散策を始めてすぐにどうやったら水晶が見つかるのかと途方にくれてしまった。その時偶然出会ったのが、鉱物学を研究している大学院生・ナギさん。ナギさんと一緒に、水晶採集に出かけることになったルリは、この経験をきっかけに次第に鉱物採集に興味を持ち始めるのだ。

瑠璃の宝石

瑠璃の宝石

 鉱物を採るのは簡単ではない。「熊出没注意」の看板がある山道を行くことも、道なき道を進むことも少なくない。だが、苦労が絶えないが故に、鉱物を見つけた時の喜びは何にも代えられない。パニング皿やハンマー、地形図など、専門的な道具を使った採集シーンはさすが本格的。カラーではないのに、ルリが見つけた鉱物はどれも色鮮やかに輝いてみえてくるから不思議だ。

advertisement

 そして、何よりもナギさんの鉱物に関する説明に惹きつけられてしまう。ルリを鉱物採集の世界へと導いていく姿はなんともカッコ良いのだ。たとえば、ナギさんはガーネットを採集しに出かけた山で「鉱物の採集は禁止」という看板に出くわしても焦らない。他の場所で採集できないかと検討し、ルリを川辺へと連れていく。鉱物は自然が生み出した芸術作品だ。壮大な時間をかけて鉱物を生み出してきた自然の力に感動させられる。

瑠璃の宝石

瑠璃の宝石

 火山国で4枚ものプレートがひしめき合う日本は種類豊富な鉱物を採ることができる世界有数の鉱物産出国なのだそうだ。そんな話を聞けば、ルリやナギさんのように、鉱物採集に出かけたくてたまらなくなってしまうのはきっと私だけではないはず。鉱物採集は現代の宝探し。なかなか旅にも出られない昨今だが、このとびきりのサイエンスマンガで冒険気分を味わってみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

あわせて読みたい