まめ夫と生きた3カ月を振り返って考える――『大豆田とわ子と三人の元夫』を忘れられない、3つの理由

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公開日:2021/11/3

【Amazon.co.jp限定】大豆田とわ子と三人の元夫 Blu-ray BOX(顔イラストエコバッグ付)

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TCエンタテインメント
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 2021年春に放送されたドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』。何かと息苦しいこの時代、人生や日常の愛おしさを教えてくれた『まめ夫』が、11月5日にBlu-ray&DVD-BOXとしてリリースされる。この機会に改めて、『まめ夫』がなぜこれほどまでに私たちの心を動かし、記憶に残る作品となったのか、考えてみたい。

 坂元裕二氏による脚本、そしてキャスト陣への信頼から『まめ夫』を楽しみにしていたのは私だけではないだろう。その期待通り、会話にちりばめられた胸を突くセリフや、人生の苦みも逃げずに描く坂元氏の筆致に圧倒されたが、過去の坂元作品にはない新しさを持つ作品であるとも感じた。その理由は次の3つだ。

 ひとつめは、『まめ夫』は説明がしにくいドラマだった、ということだ。どんなドラマなのか未見の人に伝えるとすれば、3回離婚を経験していて、今は社長として働く主人公・大豆田とわ子が、3人の元夫と再会していろいろあるという話だ。しかし、相手とはすでに離婚をしているから恋愛ドラマとも言い切れないし、とわ子は社長であるとはいえ、それだけではないので、お仕事ものでもない。終盤の喪失を除けば、大きな事件が起きるわけでもない。主だったストーリー展開もないため、会話や人物の関係性を純粋に楽しむことができたが、観る人に理解を委ねるような余白も多かった。

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 社長であり、母であり、パートナー候補の登場にドキドキする女性でもある主人公・とわ子も、つかみどころがなくミステリアスだった。最終話で彼女の胸につっかえていたものが明らかになるが、結局のところ、彼女は寂しいのか、寂しくないのかよくわからない。とわ子自身、小鳥遊大史(オダギリジョー)の言葉に涙していることに気付かないくらい、自分がよくわからないのだろう。

 しかし、ドラマの人物相関図の数行で人物像を説明できる人なんて、実際はいない。誰もが自分をよくわかっていない、それがリアルだ。『まめ夫』は、そんな物語と人物たちの「わからなさ」において革新的だった。このわからなさこそが、視聴者の切実な共感を呼ぶと共に、SNSやメディアでさまざまな考察が活発に交わされる現象を生んだのだと思う。

 そしてふたつめのポイントは、開かれたドラマだったということだ。これまでの坂元作品の多くは、虐待や被害者家族・加害者家族の人生といった重いテーマに踏み込んでいたため、観る人を選ぶところがあった。たとえば『MOTHER』や『WOMAN』は、親子関係をこじらせたことのある人の心には深く響いたが、そうではない人にとっては、もしかしたら観ていてつらい作品だったかもしれない。これは自分が目を背けてはいけないドラマなのか、決断を迫られるような緊張感が、坂元作品にはあった。しかし、『まめ夫』の主要人物たちは悩みつつも、日々をうまくやる底力を持っていて、その日常は壊れないだろうという安心感があった。不穏な空気(それは坂元作品の魅力のひとつでもあるが)が漂うことなく、カラッとした伊藤沙莉のナレーションも相まって、明るさが貫かれていた。口喧嘩する元夫同士がブロッコリーで小突き合う、明らかなコメディだ。とわ子の同世代が真似したくなるファッションやインテリアも楽しく、トレンディなドラマとしての魅力もある。そういう意味で『まめ夫』は、ここ最近の坂元作品でもっとも開けたドラマであり、誰もが思い思いに解釈して楽しむことができる「みんなのドラマ」だった。

 毎回、意外な後味を与えてくれたことも、『まめ夫』が革新的であったと感じる理由だ。観る人によって受け取り方が違うだけでなく、回ごとに観ていて異なる印象を感じる、不思議な作品だった。とわ子の状況や気分によって、キラキラしたラブストーリーにもなり、物語の先が見えないサスペンスにもなった。角田晃広演じる器の小さい男・鹿太郎が他の元夫の存在を一瞬忘れるくらい輝いたかと思えば、オダギリジョー演じる小鳥遊大史に、一気に心を奪われたりもした。毎回、思いがけないドラマ体験が得られたから、『まめ夫』はこんなにも私たちの記憶に刻まれているのだろう。

 Blu-ray&DVD-BOXには、アドリブシーンや未公開シーンを追加した第6話、第9話、最終話のディレクターズカット版や、松たか子×岡田将生×角田晃広×松田龍平による第1話オーディオコメンタリー、彼らと脚本・坂元裕二による座談会、メイキングなどの特典映像が収録されるという。ドラマの裏側に触れられるこれらのコンテンツを通じて、「ああ、このシーンにはこんな意味があったのか」と、新しい発見に至ることもありそうだ。映像パッケージを通じて、『まめ夫』のまた違う表情を見られるという期待に、胸が高鳴っている。

文=川辺美希

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河出書房新社
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