7人兄弟の大家族! いつもポジティブだった浅野家/サッカー日本代表:浅野拓磨『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』

スポーツ・科学

公開日:2022/12/4

 2022年11月23日(水)日本中が歓喜に沸いた。FIFA ワールドカップの初戦、優勝候補の強豪・ドイツに2対1で逆転勝利した日本! FWの浅野拓磨選手がゴールを決めた瞬間、感動して涙した方も多いのではないでしょうか。

 今回は、今最も注目されてるサッカー日本代表:浅野拓磨選手の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』をご紹介します。

「誰よりも深く考えなければ、誰よりも速く走ることはできない」……。7人兄弟の3番目という大家族に生まれ、サンフレッチェ広島の10番からあっという間にプレミアリーグ・アーセナルに完全移籍した浅野拓磨選手。

“世界最速”とも評されるサッカー選手は、試合中にいったい、どんな景色を見ているのか? 海外でいま直面している悩み、そして、日本代表への強烈な思いとは――。

 浅野拓磨選手の思いが詰まった『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』を、ぜひご覧ください!

※本作品は浅野拓磨著の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』から一部抜粋・編集しました

貧乏でも、浅野家はいつもポジティブだった

 ぼく自身の冷静さというか、周りを見てバランスをとろうとする感覚は、六人兄弟の三番目という立ち位置もかなり影響していると思います。

 上がいるから弟の役割もするし、下がいるからお兄ちゃんの役割もする。これもまた自分でいうのもですが、ぼくは上からも下からも好かれるタイプで、兄弟のなかではみんなと仲良くするバランサーのような役割を果たしていました。そういう立ち位置だったから、小さなころからつねに周りをよく見ていた気がします。

 実家に遊びに来た友だちにいわれたことがあります。ぼくは家のなかで誰かが何かをしているとじっとしていられないタイプで、たとえばお母さんが料理をしていたら何もいわれなくても台所をウロウロしてしまう。つねに自分の仕事を探していて落ち着きがないから、友だちから見れば「何やっとんの?」と疑問に思ったことでしょう。

 お母さんの仕事を手伝うことは、小さなころから大好きでした。何かを頼まれれば喜んでやるし、お母さんが外出しているときに家のなかをピカピカに掃除したりする。兄弟のなかでは率先してやるタイプで、もちろん下の三人には指示を出すし、叱るのもぼくの仕事です。少し年が離れた長男には怖いからあまりいえなかったけど、仲がいい次男にも「やれよ!」とガツン。そんな感じだったから、高校を卒業してプロになって家を出るとき、お母さんは「タクがいなくなったら家がたいへんや」といっていました。

 男兄弟が六人もいれば、それは経済的にはたいへんだったと思います。

 スパイクがほしいだの、ゲームがほしいだの、小さいころはそんなこともいっていました。でも、兄弟が多くてたいへんなことは理解しているから、ある程度の年齢になってからは、「ないものはない。ムリなものはムリ」と割り切れるようになった。

 だからといって、ぼく自身にも、兄弟にも、ネガティブな感情はいっさいありませんでした。むしろ、家族で過ごす時間が楽しくて仕方なかった。友だちと比べて悲観するようなことは、一度もなかった気がします。

 たとえ貧乏でも、浅野家にポジティブな空気しかなかった理由は、やっぱり、お父さんとお母さんのキャラクターが大きい。

 普通の親なら、子どもたちに苦労しているところを見せたくないと考えるのかもしれません。でも、ウチは見え見え(笑)。お金がないことは子どもたちにもバレバレで、苦労している姿も見せるけど、それでもなんだか楽しそうだった。結婚指輪を売ったときはさすがに「ヤバいな」と思いましたが、そんな状況でも、両親はいつも明るかった。だから、ぼくたち兄弟もいつも楽しかった。

 よくテレビで大家族を題材にした番組がありますが、もちろん、大家族だからといって、それだけで明るく楽しい家庭になるわけじゃないと思います。そういう意味では、やっぱりウチはお父さんとお母さんの存在が大きい。

 本音はわからないけれど、お父さんもお母さんも無理をして明るく振る舞っていたわけではなく、いつも自然体。きっと、先天的にそういう性格なんですよね。二人の〝なんとかなる精神〟は、子どもたちにもちゃんと遺伝していますから。

<第5回に続く>

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