大谷の結婚に啼く/絶望ライン工 独身獄中記⑬

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公開日:2024/3/6

絶望ライン工 独身獄中記

この連載は独身獄中記と冠し、圧倒的独身者である私がこの地獄のような孤独と不安と寂しさの三重苦をテーマに書き連ねるノンフィクション・ドキュメンタリー作品である。
インターネットの匿名掲示板にでも殴り書きしておけばよい内容を、わざわざダ・ヴィンチweb様のご厚意と悪意により隔週で配信される屈辱を味わう日々。
これこそが私へ科せられた刑罰であると感じる。
独身者の何が罪か。
それは税収や国力の低下、生物学的発展の阻害、カップ麺ばっか食べてそう、貧乏そう、なんか気持ち悪い、他にも様々な不都合を地域や国家、そして地球に与えている。
そんな我々独身者は、今週たったひとつの希望を失った。
最強の独身・大谷翔平の結婚である。

彼が結婚を発表したその日、この世界の理が大きく揺らいだ。
結ばれるであろう2人を世界が祝福し、大いなる未来を仰ぐ。
なんと素敵なニュースか。暗い世相を吹き飛ばす、眩しいくらいの知らせである。
そして、それは同時にこの星の全ての独身者達を絶望の淵に叩き落した。

このニュースを知り私はいてもたってもいられず、仕事をほうり出して社用PCで検索する。
冷や汗をかきながら井上麻里奈のSNSを見に行ったのである。
そこに「ご報告」の文字はなく、普段通りの投稿がなされていた。
ホっと胸をなでおろす。
尊い希望を同時に2つ失う最悪のシナリオはまのがれたやうだ──

我々のように平等に独身刑に処せられていた大谷が出獄し、残された者達の喪失感、無力感たらないぜ。
先ず独身男性の平均年収は来年度より大きく下がるだろう。
1人で平均を爆上げしていた男が去ったのだ。
独身男性の年収が下がれば、婚活市場は焼け野原である。
そして独身女性の絶望、これは想像するに地獄の苦しみである。
もうマッチングアプリに大谷翔平はいないのだ。
ペアーズにもOmiaiにも大谷はいない。
婚活パーティーで大谷で出会う確率はゼロになった。
つまり、大谷と結婚できる可能性はゼロであるということ。
昨日までは「大谷と結婚できる」と「結婚できない」の2択なので確率は50%であったが、今日からは紛れもなくゼロパーセント。
万が一にも起こりえない、架空のお伽噺になってしまった。
それに比べ私は幸せである。
井上麻里奈と結婚する確率はまだ50%だし、加藤英美里との結婚も50%で理論上間違いなく存在している。

最強独身男性の消失により、今後男女ともに婚活への著しい意欲低下が予想される。
結婚相談所の門を叩く者は減り、ザ・ノンフィクションで話題となった進藤くんの胸中を察すると心が痛む。
もう心が壊れそうだな。
次回もすごく楽しみにしています。

今週の連載は実は「素敵な結婚式をしよう」という結婚をしたこともない私が理想の結婚式について述べるという、恥の上塗りみてぇな地獄の内容だったため速攻で編集に連絡を入れ、急遽原稿を差し替えていただいた。
危なかった、とんだ生き恥を世間様に晒すところであった。
以上長くなりましたがご挨拶とさせていただきます。
ご両家、ご親族の皆様。本日は本当におめでとうございます。
これからは野球と家庭の二刀流。
新郎のさらなるご活躍、そしてお二人の末永い幸せを願いまして、乾杯の音頭をとらせていただきます。
それでは皆様、ご起立いただきまして、ご唱和ください。

乾杯!

<第14回に続く>

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絶望ライン工(ぜつぼうらいんこう)
41歳独身男性。工場勤務をしながら日々の有様を配信する。柴犬と暮らす。
絶望ライン工ch :https://www.youtube.com/@zetsubouline