『千と千尋の神隠し』の湯婆婆は顔がデカい。不便ではないのだろうか。

千と千尋の神隠し

2017/7/15

 2017年7月現在、日本で公開された映画の興行収入歴代1位は、2001年に公開された宮崎駿監督のアニメ『千と千尋の神隠し』だ。その観客動員数は2350万人。さらに、ビデオとDVDは合計550万本売れ、テレビで初放送されたときの視聴率は46・9%というから、本当にたくさんの日本人が見た映画なのである。

ということは、それだけ多くの人が感じたに違いない。「湯婆婆の顔、デカいな!」と。

 『千と千尋の神隠し』の舞台は、八百万の神が体を休める温泉旅館「油屋」で、その経営者が湯婆婆だ。
彼女の顔と頭は、本当に巨大だ。主人公の千尋と比べると、身長はあまり変わらないのに、湯婆婆の頭は千尋の全身の半分近くもある。
湯婆婆は魔法使いだから、姿かたちが人間離れしていても不思議ではないだろう。しかし、ここまで顔が大きいと、何か困ることはないのだろうか?

◆頭の重さはどれほどか?

湯婆婆の顔の大きさはどれほどなのか。

 アニメの画面を測定すると、頭頂部からあごまでの長さが、千尋の身長の45%もある。千尋は10歳で、現実の世界で10歳の女子の平均身長は138・9㎝だから、千尋がこれと同じとして計算すると、湯婆婆の頭は上下62・4㎝!
一般的な乗用車のタイヤの直径は65㎝ほどなので、それと同じくらいの大巨顔なのだ。

 頭がこんなに大きくて、湯婆婆は疲れないのだろうか。上下62・4㎝とは、成人女性の頭の大きさのほぼ3倍。
すると、顔の面積は3×3=9倍であり、頭部全体の体積や重量は、3×3×3=27倍になる。つまり、頭が普通の人の27倍も重いのだ。
成人女性の頭の重量は、体重の3・7%を占めるという。65歳女性の平均体重は53・6㎏だから、その頭の重さは2㎏。すると湯婆婆の頭は2㎏の27倍で、実に54㎏。頭の重さだけで、普通のおばあさん一人分ほどもある!

 それだけではない。湯婆婆の頭には、髪が提灯型にぶわっと膨らんで生えていて、巨大な頭をさらに大きく見せていた。この髪も、相当重いのではないだろうか。
前述のとおり、湯婆婆の頭部の面積は普通の人の9倍なので、紙の本数もおそらく9倍。日本人の髪の本数は平均10万本といわれるから90万本だ。それに、あのボリューム感だから、髪もかなり長いだろう。長さを1mと仮定すれば、重量は7kg。

 頭の重さの54㎏と合わせれば、合計61㎏。これは男子高校生の平均体重とほぼ同じ。これほど重い頭で平然と暮らしている湯婆婆は、まことに元気なご老人である。

◆お化粧に9時間かかる!?

 とはいえ、顔と頭がこれほど大きいと、日常生活にも苦労するだろう。
たとえば、Тシャツのように頭からかぶるタイプの服は、絶対に着られまい。普通サイズの傘を差したのでは、どうやっても頭の半分は濡れてしまう。

 筆者が特に心配するのは、お化粧だ。

 湯婆婆は、神々を客として迎える旅館の経営者だけあって、バッチリお化粧をキメている。
顔面の面積が普通の女性の9倍であり、手は小さいから普通の道具を使うしかなく、するとお化粧の時間も9倍かかることになる。

 一般的な女性が湯婆婆と同じほどのメイクをするのに1時間かかるとしたら、湯婆婆のメイク時間は毎日9時間! お客さまを夕方5時にお迎えする場合、朝の8時からお化粧にかからなければ間に合わない!

 う~む、がんばっているのだなあ、湯婆婆。
科学的にあの巨顔を考えると、どうしてもそんな気持ちになってしまうのである。【了】

◆著者プロフィール
柳田理科雄
空想科学研究所主任研究員。代表作に「空想科学読本」シリーズ。また、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演なども精力的に行っている。

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