セックスにかける時間と相手を拒否する2大理由とは?『中高年のための性生活の知恵』⑤

恋愛・結婚

2019/7/9


「セックスを避けられるようになって…もう愛されていないのかもしれない」そうした寂しさをひっそりと抱えている中高年の男性や女性は多いようです。男性は、中高年期の女性の心と体の変化を知らない。女性は、中高年期の男性の心と体の変化を知らない。そのことが、寂しさの根っこに存在しています。気持ちのすれ違いは、お互いの心と体の変化を知ることで解決するはず。中高年期ならではの豊かで穏やかな性を楽しみ、愛で満たされた毎日となるように――。

女性がセックスを断る理由(金子和子)

■「楽しくない」「痛い」が拒否の二大理由


 一般的に、男性の方が「性欲が強い」と思われています。

 実際、配偶者との性欲の一致についてアンケートをとってみると全世帯の平均で「相手の欲求が自分より乏しすぎる」と答えた人は男性39%、女性7%で、男性の方がどの年代でも多くなっています(上グラフ)。

 逆に、「相手の欲求が自分より強すぎる」と答えたのは、男性3%、女性25%となっています。

 しかし、男女共に約2割は「ともに同じ程度の欲求がある」と答えていることから、一概に「男性は性欲が強くて女性は淡白」とは言えない現実があることも読み取れます。

 では、女性がセックスを断るとき、そこにはどんな理由があるのでしょうか。

 実は、カウンセリングをしていると「その人とのセックスは楽しくないからしたくない」という女性が非常に多いのです。

「セックスの求め方、やり方が、あまりに自分勝手」と感じているケースが多く、具体的には男性が自分のペースで求めて、挿入して射精して、「はい、終わり」というもの。これでは当然ながら女性にとってはつまらないセックスとなり、「もうしたくない」という心情になってしまうというわけです。

「それならそうと、言ってくれればいいのに」と男性は思うかもしれませんが、一般的に、現代の中高年女性は「セックスに対して口にするのははしたない」という先入観を強く持っています。そのため、不満を胸にしまって言わないケースが非常に多いのですが、この理由を逆から見れば、女性も男性と同じようにセックスを楽しみたいと考えていることが分かります。

 セックスを拒否する理由として、もう一つ多いのが「痛い」という身体的な問題です。これを「性交痛」といいます。

 男性は「痛いなら婦人科で診てもらえばいい」と思うようですが、痛みを感じるのは身体的な問題だけではありません。気乗りしないけれど「応じないと相手が怒るから」とか「不機嫌になると面倒だから」と、渋々応じるケースも少なからずあります。

 また、前戯が十分でなく、女性側が男性器を受け入れる体の準備が整っていない状態で挿入をするために、性交痛が起こるケースも多く見受けられます。

この不快感が繰り返されると、女性は「あの痛みがまた……」と、セックスに対する不安感、恐怖感を抱くようになり、拒否するようになってしまうというわけです。

 ちなみに「自分はしっかり時間をかけて前戯をしている」と男性は思っているかもしれませんが──多くの場合で前戯が短すぎることを裏付ける調査があります。


 わたしたちが行った調査によると、有配偶者女性の34%が性交時間の平均を「20分程度」と回答しています。さらに、「10分程度」という回答が24%もあり、これは高齢者ほど高い数値となっています。ちなみに、「5分以内」という回答も6%ありました。

 つまり、64%が5分から20分のうちで前戯から挿入までをまかなっていると考えると、女性の体が準備を整える時間としてあまりにも不十分です。男性が「これくらいでいいだろう」と思っている前戯は、女性の体にとっては足りていないため、性交痛につながるわけです。

■気乗りのしないセックスに応じる妻の本心

 その他、女性がセックスを拒否する理由には、「相手自身がイヤ」「気乗りがしない」という場合もあります。


 気乗りのしないセックスに応じる頻度についてのアンケートに、45%の女性が「よくある」「時々ある」と回答しており、その理由のトップ2が、「相手が喜ぶから」と「妻の役割だから」と、ここでもセックスが男性本位であることが示されています。

 相手を拒否する感情がどこからくるのかひもといてみると、実は数十年前にもさかのぼることが非常に多くあります。

 カウンセリングを受ける中高年女性たちからよく出てくるのは、「子育てのときも手伝ってくれなかったのに」という、愚痴とも不信感とも思える感情です。

 若いころからの小さな行き違いの積み重ねが数十年のうちに積もり積もって、中高年になったときに爆発する、というのはよくある話です。

 長年のうちに蓄積され、こじれにこじれていることが多いので、この場合は修復するのが難しくなります。

 セックスレスのご相談でいらしたA子さんのケースを紹介しましょう。

 3年前、A子さんがインフルエンザで寝込んでいるときでした。高熱でベッドで横になっていたところ、夫がベッドに潜り込んできて、「2~3分、体を貸して」とセックスを求められたのです。体調が悪く、断る気力もなかったため応じたそうですが、その時の気持ちをA子さんはうまく表現できないと言いました。

 実は、夫の利己的な要求に対し、とても悲しく、理不尽さを感じながらも、妻が渋々対応するというのも、カウンセリングではよく聞く話です。

 A子さんは、それまでも気乗りしないセックスに応じたことはたびたびあったようですが、それ以降、セックスすることに抵抗を感じるようになり、夫婦仲にも亀裂が入るようになりました。A子さんは、夫の性欲が落ちてくれることをひそかに願っていましたが、夫は「おかしいから医者に行ってこい」と言うばかり。

 こういった経緯で、A子さんはカウンセリングにいらしたのでした。

 これと似た事例は珍しくありません。そして、そんなひどいことをする男とは一体どんな人物なのかと思いますが、実際にお会してみると、拍子抜けするほどいたって普通の男性であることが多いのです。

 会社やプライベートで問題なく常識的に振る舞えるパーソナリティの男性でも、セックスとなるとパートナーの気持ちに無頓着になってしまうケースが非常に多いということです。特に、長年連れ添った妻に対して、顕著に現れる傾向があります。その相手のことを考えないセックスが、パートナーのトラウマになってしまっているのです。

■男女で異なるセックスの効果

 女性が拒否するケースでも、女性側にも改善すべき点はあるとわたしは考えています。それは、自分の本音を隠すのではなく、相手にきちんと伝わるよう言葉を投げかけることです。

 先ほどのAさんの場合で言えば「あのとき、わたしは本当はとても嫌だった。病気の自分をもっといたわってほしかった」と、夫に伝え、理解してもらっていたら

 セックスレスにはならなかったかもしれません。セックスを拒否する自分の気持ちを理解してもらうことが、夫婦関係そのものの改善につながるケースはたくさんあります。

 男性は、冷めきった夫婦間をセックスという愛の行為で取り戻すことができると考えがちですが、それはまったく逆効果です。

 二人の関係性が良ければ、少なくとも悪くなっていなければ、セックスレスの期間が長くても再びセックスを取り戻すことはできます。しかし、関係が冷めきった場合、残念ですがカウンセリングをいくらやっても関係の修復は難しくなります。

 なぜなら、セックスのベースは性欲だけではなく、関係性やコミュニケーションだからです。お互いに心地よい頻度で夫婦の時間を持てるようであれば、日常的な関係性も心地よく保てますし、また逆もしかりです。

 厳しいようですが、「けんかしてもセックスさえすれば仲直りできる」というのは、男性側の大きな誤解だと認識を新たにすべきです。女性側にしてみれば、気乗りしないのに強引にセックスをされたことでAさんのように修復困難な「家庭内レイプ」のトラウマにつながることもあります。

<第6回「男性がセックスを断る理由」に続く>