成功ビジネスのすごい仕組みをビジュアルで学べる! カネ編/『ビジネスモデル2.0図鑑』②

ビジネス

公開日:2019/7/20

 うまくいっているビジネスモデルにはどんな共通点があるのか? 「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と4カテゴリーに分けた全100事例を図解。すべてを同じフォーマットで比べながら、各企業の「すごい仕組み」を学べる一冊です。第2回目は「カネ」カテゴリーから2社を紹介します。

『ビジネスモデル2.0図鑑』(近藤哲朗/KADOKAWA)

【カネ】Lemonade ~貧困支援などに関心がある物件オーナーにアプローチ~

 2015年に米国ニューヨークで創業した「Lemonade(レモネード)」は、物件オーナー向けに提供される家財保険サービス。月5ドルから加入できる。アプリで加入できるため、早ければ90秒程度で手続きが完了する手軽さが魅力。

 創業者の2人は、もともと保険業界とは関わりがなかったため、同社は従来の保険会社とは異なる要素が多く、AI(人工知能)や行動経済学を取り入れたビジネスモデルを展開しているのが特徴。

 最も特徴的なのは、物件オーナーは自らが興味・関心のある社会課題のグループに参加すること。社会課題の中には貧困支援や病児支援などがあり、さらに、そのグループごとに保険金のプールが用意されている。通常、保険料の余剰金は保険会社の利益になるものだが、Lemonadeは、保険金の余剰金が社会課題に関係した団体に寄付されるという設計になっている。

 このような仕組みであるため、物件オーナーは、家具の損壊によって保険金を引き出さないほうが、余剰金がたまって、より多額の寄付ができるようになる。これは同じグループに所属する他のオーナーも一緒。つまり、保険金の余剰金を減らさないために、なるべく請求しないでよいようにするインセンティブが働く。

「共感する社会課題に寄付する」という制度設計にすることで、社会課題に関心のあるミレニアルユーザー(米国で2000年代に成人あるいは社会人になる世代)に対して効果的にアプローチしている。

 2018年7月現在、同社はニューヨークやカリフォルニア州など20の州で保険サービスを提供している。日本のソフトバンク社がLemonadeに対して1億2000万ドル(約135億円)の出資をしたことで話題になったが、日本市場への参入の話も出てきている。

【カネ】ジャンプルーキー! ~広告収益が100%マンガ家に還元される~

「ジャンプルーキー!」は集英社が運用しているマンガ家の卵たちのためのサービス。彼らがお金を稼ぐには、大きな賞などをとって有名雑誌に連載というのがよくあるパターンだと思う。当たり前だけれども、売れるまではマンガ家の卵たちは苦しい状況が続く。しかし、ジャンプルーキー!では有名ではないマンガ家にも収益を得る手段を提供している。また、手軽に少しでも収益が得られることで、「プロのマンガ家にまでなろうとは思っていないけれどもマンガが好きで描きたい人たち」が、より創作活動を続けやすいサービスとなっている。

 仕組みはシンプル。「マンガ家たちがアプリにマンガを投稿する→読者は全作品を無料で読める→読み終わったら広告が表示される→広告収入がマンガ家に支払われる」という流れ。大きな特徴は、広告収益がすべてマンガ家に分配されるところにある。具体的には、「広告の閲覧数=自分のマンガが最後まで読まれた数」に応じてマンガ家に広告収益が入る形になっている。広告はマンガ読了後に表示されるため、最後まで読んでもらえるような面白いマンガを描こうとする動機が生まれる仕組みだ。

 もうひとつのユニークな点は、マンガ家と読者の距離が近いこと。「いいね!」機能やコメントで読者がマンガ家を直接応援できるから、まだ世に出ていないマンガ家にも読者からのリアルなフィードバックを受け取る機会が与えられる。一方、読者はまだメジャーになっていないマンガ家を見つけて応援する楽しみがある。

 では、広告収益を作者に100%還元してしまう集英社は、どこで儲けを出すのか? ジャンプルーキー!内で人気ランキング上位の作品が毎月実施される漫画賞にノミネートされ、そこで入賞すると、『少年ジャンプ』本誌やWeb版の『少年ジャンプ+』などの各誌に掲載されることによってまかなわれる。掲載作品が連載されると、単行本の売上として集英社に利益が入るからだ。なにより集英社にとっては、多くのマンガ家を若いうちから集めることができるので、未来の『少年ジャンプ』を背負う人気マンガ家の発掘にもつながっている。

<第3回に続く>

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●プロフィール
近藤哲朗
株式会社そろそろ代表取締役。1987年生まれ。千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。ディレクターとして、Webサイトやアプリの制作に携わる。2014年、面白法人カヤックで出会ったメンバーと、社会課題の解決を目的とした事業や組織を応援するため、株式会社そろそろを創業。その一環で、noteで「#ビジネスモデル図解シリーズ」「#ビジネスワード図解シリーズ」を発表したところ、NewsPicksで合計20,000Pickを超えるなど、大きな話題を集める。現在は約50人体制の有志組織「ビジネス図解研究所」を運営し、「ビジネス×図解の追求」をコンセプトに、大企業やNPO法人向けにビジネス図解のコンサルティングを行う。

Twitter:@tetsurokondoh(チャーリー)
note:https://note.mu/tck