「まだ早い、今はダメ」を繰り返していたら… “高齢出産”という現実/『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』①

暮らし

公開日:2020/1/27

女の生き方に正解なし! 恋愛、結婚、キャリア、子作り、不倫…。どっちの道を進んでも、どっちも案外つらいもの。A子とB美、どっちが幸せ? 生き抜くためのヒントが見つかる、女たちのリアルな本音対決!

『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』(鈴木涼美/マガジンハウス)

【子作り】
早く産むか遅く産むかで、女の人生は引き裂かれる

A子 まだ早い、をいつ間違えたか忘れた女

・35歳
・医療系総合職
・既婚

 思えば女の一生は、妊娠を心配する10代20代に次いで、不妊を心配する30代40代が始まり、子供ができない身体になって終わる。高校生や大学生は基本的に生理が遅れるたびに、酔って甘かった避妊を後悔し、妊娠検査薬を天にかざして祈り、遅れてきた生理に安堵(あんど)の涙を流して生きている。

 それは社会人になったところでそうは変わらず、特に内定中や入社直後は、せっかく大企業に受かったのに今妊娠したら台無し、と焦っているし、3年目くらいになったらなったでやっと仕事に慣れ、少しは大きな仕事も任されるようになったのに今妊娠したら台無し、とやはりヒヤヒヤしている。

 そして「落ち着いたら」「もう少し貯金ができたら」なんて先延ばしにしていても、給料が減って仕事が増えたこのバブル以降の時代に、仕事が「落ち着く」ことも貯金が「増える」こともあまりなく、気がつけば会社ではそうそう簡単に抜けられない責任ある立場を押し付けられ、しかも仕事は入れ込んでやれば結構楽しく、女の生殖機能がどんどん衰えていることに気がつかないまま、〝まだ早い・今は無理〟を繰り返し、気付けば30代後半に突入していることすらある。

 低用量ピルが一般的な女性の間でもかなり定着し、中絶件数が減っているのはある意味喜ばしいっちゃ喜ばしいのだろうが、避妊知識とピルが広まったことで、もうできちゃったし堕(お)ろすの嫌だしタイミング悪いけど産んでしまえ、という結果オーライな決断も減っているような気がする。みんなしっかりピルで生理と避妊を管理して、〝まだ早い・今はだめ〟と思えばきちんと望まない妊娠を避けてしまえる。

 実際、未婚の女と話していても、一生子供はいらないという女は少なくて、〝結婚する気がない・旦那はいらない〟と考えていても子供はいつかは欲しいと思っているのはわりと普通で、けれど私も含めて同級生たちはついに、「今から急いで妊娠しても高齢出産」の年齢に突入してしまった。

<第2回に続く>