「白井悠介のなんとかなるさ」②お父さん、お母さん、ごめんなさい

　ぼくの性格を一言で表すならば「面倒くさがり」です。面倒なことがとにかく苦手で、どんなことでも「どうにかなる、大丈夫」と考えてきました。つまりただ、後回しにしているだけなんですけど……。この連載の担当編集さんにも「なんとかなるさって思って生きてきたんでしょうね」と笑われ、しかしなぜかこうして連載のきっかけを頂けたので、人生とはどうなるかわからないものです。

　幼少期の頃からそんな性格だったので、ときには家族がヒヤッとするような事件を起こすこともありました。

　ぼくには兄と弟がいるんですが、彼らはぼくと比べ物にならないくらい優秀な人たちでした。とても穏やかで、勉強ができる。一方でぼくはというと、大の勉強嫌い。放任主義で子どもをのびのびと育てていた両親も、見るに見かねて「勉強しなさい！」と言うほどでした。

　当時のぼくはとてもヤンチャな子どもで、白井家で唯一のトラブルメイカー。良く言えば元気いっぱいな子どもだったんですが、まぁ、両親にはそれなりに心配をかけたわけです。

　小学生の頃には、母親と喧嘩をして、“一日限りの家出”をしたこともありました。あまりに「勉強しなさい」と言われるもんだから、グレてやろうと思ったんです。家を飛び出し、雨が土砂降りのなか自転車に乗る。そうして向かった先は、街で一番大きいおもちゃ屋さんでした。

　でも、その途中でスリップし、自転車ごと横転したぼくは、膝がパックリ割れるという大怪我を負ってしまいました。泣きわめくぼくを助けてくれたのは、見知らぬお兄さん。その後、両親が迎えに来てくれて、ぼくのプチ家出は幕を下ろしたのでした。

　とにかくヤンチャだったぼくは、それなりに危ない目に遭うことも多くて、高校生の頃には大事件を起こしました。いまでも白井家で語り継がれている「ベランダ落下事件」です。

　お昼休みに友達と校舎3階のベランダで遊んでいたぼくは、なにを思ったか、ベランダの柵に手をかけ、ギリギリまで身を乗り出すという行為に出たのです。決して運動神経が良かったわけでもないのに、無謀ですよね。

　そして、バランスを崩したぼくはそのまま落下。ところが遠心力が働いたのか、クルッと回転し、見事2階のベランダへ着地しました。もうなにが起こったのかわけがわかりません。それ以上にパニックだったのは、2階の教室にいた生徒たちです。突如、上の階から男子生徒が落っこちてきたんですから。

　幸いにも怪我はなく、鼻血をちょっと出す程度で済んだのですが、騒動は収まるわけもなく、ぼくは担架で病院へと運ばれてしまいました。今考えると、これって相当な事件だよな……。

　でも、ぼくは「ラッキー」と思っていたのです。なぜかというと、当時はテスト期間中だったので、「これでテストを受けなくて済むじゃん」と考えていたという……。我ながら、どうしようもない子どもでした。

　もちろん、両親は大慌てで病院に駆けつけてきました。そしてこっぴどく怒られたことは説明しなくてもわかりますよね。お父さん、お母さん、その節はごめんなさい。

　後に聞いた話ですが、ぼくが病院に搬送された後、全校集会が開かれていたそうです。生徒がベランダから落下した。学校側にとっては大事です。きっと物々しい雰囲気だったことでしょう。

　でも、ぼくの頭のなかにあったのは、「テスト免除かな、良かった～」という楽観的な考え。その頃から、なにが起きたとしてポジティブに捉える「なんとかなるさ精神」が染み付いていたんでしょうね。本当にどうしようもない（笑）。

　そんな後先考えない少年が、どうして声優を目指すことになったのか。それはまた次のお話で！