「白井悠介のなんとかなるさ」④東京って、こんなにアニメが観られるの!?

小説・エッセイ

公開日:2020/4/27


 声優を目指すとぼくが決意したとき、一番驚いたのは父でした。兄に続いて、まさかぼくまで。我が家は画材店を営んでいたので、「後継ぎはどうなるんだ!?」という気持ちもあったのかもしれません。

 でも、無理に止められるようなことはありませんでした。びっくりはしていたものの、母と一緒に「チャレンジしてみなさい」と背中を押してくれたんです。

 父も母も応援してくれるとなれば、もうこっちのもの(笑)。上京した兄の家に泊まらせてもらって、気になる専門学校の入学説明会に参加しました。何校か覗いてみて、最終的に入学を決めたのは兄と違う学校。2年先を行く兄に対して、ちょっとしたライバル心のようなものもあったのかもしれません。同じルートをなぞるのではなく、ぼくはぼくの道を行く。その先でいつか共演できたらいいな、なんて妄想を膨らませていました。

 入学も決まり、ついに上京したぼくを待ち受けていたのは、「一人暮らしの解放感」です。ぼくのことを監視する親もいないし、なんてったって自由! しかも、専門学校では声優になるための勉強ができる。最高じゃないですか?

 さらにぼくを興奮させたのは、東京で放送されているアニメの数です。ぼくが住んでいた長野の田舎町では、とにかく観れるアニメの数が少なかった。おそらく、東京と比べると3分の1ほどだったと思います。つまり東京にいれば、それまでの3倍の数のアニメが観られる。案の定、ぼくはどっぷりとアニメ沼に浸かりました。

 当時とくにハマっていたのは、『交響詩篇エウレカセブン』です。録画して欠かさず観ていましたし、いつかはこういう作品に出てやるぞという気持ちがむくむくと湧きました。

 田舎から出てきて初めての一人暮らしで不安はなかったのか、と聞かれることもあるんですが、それがなかったんですよ。料理すらできなかったんですけど、「だったら、コンビニ弁当を食べればいいじゃん」って思っていました(笑)。

 母からは「自炊したほうが節約になるよ」と言われていました。そりゃそうですよね。でもそんなスキルもないし、重度の面倒くさがりなぼくからすると、一から料理の腕を磨くなんて、面倒の極みだったんです。なるべく面倒なことはしたくない! とにかく動きたくない!

 むしろ、コンビニで買えるものって美味しいじゃないですか。当時大好物だったのは、牛カルビ弁当。あれ、最高。それと一人暮らし男子の絶対的味方である、日清カップヌードル。お気に入りはシーフード味とチリトマト味です。そういったものばかり食べては、アニメに浸る天国みたいな日々を送っていました。

 しかし、そんな生活が長く続くわけもなく……

 次回は一人暮らしで大失敗した経験をお話ししますね。


今週の一言:アニメとコンビニがある時代に生まれて良かった~~!!

構成協力=五十嵐 大 写真=干川 修 スタイリング=小林かおる ヘアメイク=川口愉里恵
衣装協力=ミックスメッシュワンピース(gomme/GOMME HOMME) 2万4200円/ラフォーレ原宿店 TEL 03-3796-4336

第5回につづく

しらい・ゆうすけ
1月18日、長野県生まれ。2011年に声優デビュー。2015年に出演した『美男高校地球防衛部LOVE!』で注目を集め、以降、『アイドルマスター SideM』『アイドリッシュセブン』『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』などの話題作への出演が相次ぐ。「理想の緑」をブランドアイコンとする、オリジナルアパレルブランド【MIDORI】も立ち上げたほか、YouTuberとしての活動もスタートし、「しらいむチャンネル」で自由気ままな動画も投稿中。
公式Twitter:@shirai_universe
公式YouTubeチャンネル:しらいむチャンネル
MIDORI公式サイト:アパレルブランド