これだけは覚えておきたい! やってはいけないチャットのマナー/『ビジネスチャット時短革命』⑦

ビジネス

公開日:2020/5/17

新型コロナウィルスの影響が拡大する中、在宅勤務を取り入れる動きが広がっています。テレワークやリモートワークの普及により、ビジネスチャット・オンライン会議の導入を進めている企業も急増し、従来のメール中心のコミュニケーションではビジネスが円滑に進まないケースも。新たな時代を生き抜くためのビジネスチャットとオンライン会議を駆使した「新しい働き方」を指南します。

『ビジネスチャット時短革命 ―メールは時間泥棒 ― メールを48.6%減らす働き方』(越川慎司/インプレス)

「これやってはダメ!」チャットのマナー

 心理的安全性の中でカジュアルなコミュニケーションを実現するのがビジネスチャットの特徴ですが、なんでもかんでも無秩序で自由に会話してもOKというわけではありません。このセクションでは、弊社のクライアント企業で実際に起きたトラブルとその対処方法について紹介します。

 まず、メールのやりとりに慣れきっている人は、ビジネスチャットでどのくらいカジュアルに会話をしていいのかどうか悩みがちです。よくあるのは、チャットにもかかわらず「お疲れ様です」や「よろしくお願い致します」といった堅苦しい表現で相手のご機嫌をうかがうケースです。送信する文章を短くして入力時間を時短することができるのがビジネスチャットのベネフィットです。そのため、メールと同じように長い文章を入力してしまっては意味がありません。

 とはいえ日本人には空気を読みながら相手に嫌われないようにコミニケーションする国民性があるので、あらかじめ会社としてのガイドラインを決めておくといいでしょう。社内のチャットで「お疲れ様です」や敬語は使わないなどとガイドラインで定めておき、誰もが自然な会話を楽しめる文化を作りましょう。

「@」のあとに「さん」は付けない!

 チャットにおける敬語といえば、まず多発するのが「さん付け問題」です。「@」のあとに特定の人を指定してメッセージを送信すると、その人に対する私信になりますが、「『@』のあとに『さん』という呼称をつける必要があるか?」という問題です。画面13-1のように「@ 越川慎司 さん、その資料は……」とするか、「@ 越川慎司 その資料は……」とするかが議論になるのです。結論は“「さん付け」不要”です。チャットの中で過剰な気遣いは必要ありません。さん付けしなかったからといって相手を見下しているわけでもないですから。あくまでも、心理的安全性が確保されて、気軽な会話ができるという前提で、社内のコミュニケーションを活性化させるべきです。

上の画面は「@」で相手を指定したあとにわざわざ「さん」と敬称を入力しているが、ビジネスチャットで「@」指定のあとの「さん付け」は不要。下の画面のようにそのまま本文を入力してかまわない。

 それよりも問題とすべきは「プライベートな話題の連続投稿」です。ビジネスチャットは仕事に使う目的のツールなので、過剰な公私混同はNGです。チャンネルのテーマから逸れてウケを狙ったコメントの連続投稿や、個人的な感情などを何度も何度も投稿するのは避けるべきです。たとえば、会社が主催する顧客向けセミナーのテーマでチャンネルを設けているときに、競合他社の失敗事例の話に行き着き、いつまでも他社批判をくり返すといったケースです。あくまでもこのチャンネルはセミナーの企画が目的なので、いつまでも他社の批判を行っていては結論が出ません。また、連続投稿すると古いメッセージがすぐに上へ流れていってしまうので、ほかのメンバーは関係のない投稿をいつまでも見せられることになり、うれしいものではありません。

長いメッセージはひと工夫して送ろう

 ビジネスチャットでは長すぎるメッセージもNGです。そもそも長文のメールを入力しないで済むようにチャットに移行したにもかかわらず、チャットでも長い文章を送ってくる人がいます。ましてや、「営業本部 営業第3課 営業推進3グループの越川です」といった所属部署の紹介や、「いつもお世話になっています」などというメールの定型文はまったく必要ありません。「今ちょっといいですか?」というカジュアルな会話がスピード解決や新発想を生むのです。とくにチャットは、スマートフォンアプリで読まれることも多いので、画面を何度もスクロールしないと読めないような長文は御法度です。多くのことを伝えたいのであれば、重要なポイントに絞り、箇条書きやスペースを使って、相手に読みやすい文章にすべきです。

 また、「チャンネル違い」も多くの企業で問題になります。特定のテーマについて話し合うのがチャンネルの存在意義ですが、テーマとはまったく関係ない話が増えていき、本来の目的を忘れてしまうことです。もし、テーマから離れて会話をするのであれば、新たにチャンネルを作成してそこで議論を行ってください。話題を整理するために作ったチャンネルが、会話の脱線によって崩されることは避けるべきです。

 このほかに「チャンネル数の増大」もよく問題になります。チームの雰囲気を良くするために、趣味などのテーマで盛り上がるチャンネルを作ることはいいことだと思います。テーマから逸れた趣味の会話が続くのであれば、趣味に特化したチャンネルを作ってそこで盛り上がるようにしましょう。ただし、無秩序にチャンネル数が多くなると、重要なチャンネルが埋もれてしまい、必要な情報を探す時間も増えてしまいます。いつも確認すべきチャンネルはピン留めするなどして見やすくもできますが、あまりにも多くのチャンネルがあるとメッセージを見ること自体に時間がかかり疲れてしまいます。優先度の低いテーマのチャンネルは通知をオフにして特定の時間だけ見るなどの習慣を身に付けることも必要です。

勤務時間外には返事が来なくてもあたりまえ

 「夜間などの勤務時間外にも応答すべきか?」も多くの企業で議論になる問題です。スピード感をもってコミュニケーションできるのがチャットの特徴ですが、あっという間に時間が経過したり、スマートフォンでも気軽にメッセージを送ったりできることから、勤務時間外にもチャットが盛り上がることがあります。しかし、あくまでビジネスで使用するツールなので、ビジネスルールに則る必要はあります。思いついたアイデアをすぐにメッセージで送りたい気持ちもわかりますが、夜間や早朝に送られたメッセージに対しては、相手に返信の義務がないことに留意しておきましょう。

 こうしたチャンネルやメッセージの使い方は組織によって異なりますが、社内にビジネスチャットが定着・浸透するまではある程度の運用ルールを整備しておいたほうがいいと思います。

<第8回に続く>