結果がわからなくても続けてみる。毎朝のストレッチ習慣が気づかせてくれたこと/暮らしのなかに始まりと終わりをつくる⑤

暮らし

公開日:2020/5/27

自粛で家に籠もりがちだからこそ“日々の暮らし”を大切にしたい。心身を保つ日々のちょっとした工夫や習慣を「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターにして“暮らし”にまつわる数々の著書を持つ一田憲子さんがご紹介します!

『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』(一田憲子/幻冬舎)

結果がすぐに出なくても、毎朝、ストレッチを続けてみる

 毎朝、仕事に取り掛かる前にリビングにヨガマットを敷いて、好きな音楽をかけてストレッチを始めます。これは、ヨガを習っていた頃に始めた習慣。以来、誰かから「こんな運動がいいんだよ」と聞くたびに、スクワットをプラスしたり、ストレッチポールを取り入れてみたり。少しずつ変化させながら、私なりのストレッチのルーティンができあがりました。

 忙しくなって原稿に追われると、気持ちの余裕がなくなって、このストレッチをパスすることもしょっちゅう。すると、ふと気づくと肩が凝り、背中がカチカチになっています。我流の「なんちゃってストレッチ」ですが、毎日続けていると、確実に体のケアになっているんだなあと、サボるたびに実感します。

 最近、近所のパーソナルトレーニングジムに通い始めました。そこで教えてもらったのが、肩甲骨を柔らかくすること。ストレッチポールに仰向けに寝転がり、両手を床につけて頭の上へと回すだけで、肩甲骨がゴリゴリと鳴り、腕の付け根がギュ~ッと引っ張られて痛いのなんの! さっそくいつものストレッチに、この「肩甲骨回し」を取り入れることにしました。

 さらに、気になる「ぽっこりお腹」解消のためには、仰向けに寝転がって、膝を両手で抱え、左右交互に胸まで引き寄せます。「ウホウホと筋トレしなくていいんです。大事なのはインナーマッスルを鍛えること」とトレーナー。

「え~? こんな緩い体操で、効果あるのかな?」と半信半疑でしたが、2週間、3週間と続けるうちに、するすると体重が落ちてびっくり! 「インナーマッスルって、ココにあったのね」ということがようやく理解できました。コツコツと続けることで、体は確実に変わる。そのことを実感する今日このごろです。

 私は、せっかちなので、何か行動を起こしたら、すぐに結果が出ないと気が済みません。若い頃は、部屋の片付けを始めたら、夜中までかかってもすべてを整理し、ピシッと箱がそろった姿を眺めなければやめられなかったし、仕事でも、アポイントを入れてOKかどうかがわからないとイライラしたものです。

 歳を重ねるにつれ、世の中にはすぐに結果が出ないものがある、ということがわかってきました。どうなるか、結果は見えなくとも、「今日できること」を淡々と繰り返す。そうやって得た粘り強さは、持続力があり、確実に自分のものとなります。いくら頑張って整理整頓して、ピシッと箱をそろえてみても、それが自分の生活スタイルと合っていなければ、「箱にしまうこと」さえ続けられなくて、結局元の状態に。それよりも、時間をかけて、自分のクセを知り、生活に合わせた「しまい場所」「しまい方」を見つけた方が、部屋は整うもの。「今すぐ」取材させてもらえなくても、会ってお茶を飲みながら無駄話をして、少しずつ人間関係を密にしていった方が、いい取材ができます。

 そんな経験を経て、学んだことは「結果がわからなくても続けてみる」という、今まで私が最も苦手としたアプローチが、なかなか有効なんじゃないかということでした。つまり、「この方法はもしかしたら間違っているかもしれない」けれど、とにかくやってみる、ということです。ここが難しい……。みんな「無駄な努力はしたくない」のです。できれば、直線距離で結果に到達したい。でも回り道をするからこそ、「できること」と「できないこと」がわかり、自分にとって本当に必要な収納方法や、ストレッチの仕方を知ることができます。そして、ハッと気づいた時、部屋がそこそこ片付いていたり、前屈してラクに床に手がつくようになっていたり……。コツコツと続けてさえいれば、必ず実りの瞬間がやってくるということがたまらなく嬉しい!

 忙しい毎日を送っていると、「効率モード」の思考回路になっていきます。毎朝ヨガマットを敷き、座ってフ~ッと深い呼吸をすることで、そんな回路をプチンと切る。それが、私のストレッチタイムの大きな効用のよう。体を動かしながら、「目標」や「結果」という先にあった視点を、「今ここ」にある体へと戻す。朝のストレッチタイムは、つい突っ走りがちな頭と心の「重石」となってくれます。

<第6回に続く>