「なんとなく」で書き始めていませんか? 文章力を高める前にすべきこと…/言葉を減らせば文章は分かりやすくなる②

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公開日:2020/6/7

日本語の専門家としてテレビで活躍中の著者が、「短く、わかりやすい文章」の書き方をやさしく解説。「書き出せない」「まとまらない」という文章が苦手な人から、「もっと文章スキルを上げたい」という人まで役立つテクニックが満載です。

『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』(山口謠司/ワニブックス)

漠然とした考えで書き始めると長くなる

「文章が書けない」「気がついたら文章が長くなっていた」

 文章作成で悩んでいる人は多いものです。社会人になると、文章を使って相手に伝える作業から逃れることはできません。

 企画書、報告書、プレゼン資料、メール、論文など、文章であなたの意思や状況を相手に伝えなければならない機会が多くあります。

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 文章がうまく書けない理由は、書くべきことが自分の頭の中でしっかり決まっていないからだと私は考えています。

 文章力がないという問題以前の段階で、つまずいている人が多いのです。

「伝えるべきこと」「伝えたいこと」が自分の頭の中で明確にイメージされ、整理されている人は、思考をうまく文章化することができます。

 逆に、「なんとなくこういうことを伝えたいんだけどな」という程度の考えで書き始めてしまう人は、うまく文章を書くことができません。何を書けばいいのか明確になっていないのに、文章化できるはずがないのです。

頭の中から「これが言いたい」を取り出す

 私は職業柄、論文を多く読みます。学者が書いた論文はもちろん、学生の書くレポートや卒業論文も読みます。

 論文を読むと、執筆者の思考が整理されて書かれたものかどうかが、すぐにわかります。整理されていない人の文章は、ダラダラと長く、何を伝えたいのかがわからないからです。

「わかりやすくて納得できる」という論文は、短くシンプルな文章が集まっています。この差が生まれるのは、文章力の差というよりも、思考を整理して書いたかどうかの差ではないかと思います。

 伝えるべきことが明確ではない状態で文章を書いてしまうと、何を言っているのかわからない文章が出来上がるのです。

 わかりやすいシンプルな文章を書くためには、思考を整理することが鍵となります。漠然とした思考をしていては、頭の中の考えはまとまりません。

 あらゆる文章を作成するとき、的確に思考を言語化することができません。

 そこで、漠然と頭に浮かんでいる考えの中から、「自分はこれが言いたい」と思うことを取り出すことが必要です。

 文章を書く前に、頭の中の考えを整理する。

 これを怠らない人が、短く伝わる文章を書くことができるのです。

<第3回に続く>