「白井悠介のなんとかなるさ」⑫やっと、声優としてプロデビューできたぞ!

小説・エッセイ

公開日:2020/6/22

 紆余曲折を経て、なんとか声優事務所・EARLY WINGへの所属が決まったぼく。年齢的にもギリギリかな……と不安になっていたタイミングだったので、飛び跳ねるくらいうれしかったことを覚えています。

 しかし所属とは言えど、まだまだ実力は備わっていない状態。事務所に入ってからもレッスンを受け続ける必要がありました。専門学校を無事に卒業しても、レッスンを続ける日々は終わらないのでした。

 しかも、なにが大変かって、EARLY WINGのレッスンではめちゃくちゃ腹筋をやるんですよ! 合計4つの専門学校と養成所を渡り歩いてきたぼくでも、こんなに腹筋を重視するレッスンは初めて。所属の手続きをする際に「うちはかなり腹筋を鍛えますよ」とは言われていたものの、いやいや、想像以上なんですけど!? ここだけの話、あまりにもつらくてよくサボっていました……。マネージャーさん、ごめんなさい!

 でも、EARLY WINGに所属して後悔したことはありません。スタッフさんはみんなやさしいし、ぼくら声優のことをちゃんと考えてくれている。そしてなにより、所属してすぐに夢が叶ったんです。

 そう、「プロデビュー」です!

 ぼくの声優としてのデビュー作は『閃乱カグラ』というゲームでの小さな役でした。過去の回想シーンに登場する、悪~い役です。所属してわずか1カ月で声をかけていただけたので、あらためて「ぼく、本当に声優事務所に入ったんだ」と感動しました。

 小さな役で感動するなんて志が低い、と思う人もいるかもしれません。でもね、これが本当にうれしかったんです。幼い頃からずっと声優を夢見てきて、田舎から上京し、ひたすらに走ってきました。途中、道を外れそうになることもあったけど、それでもぼくはやっぱり声優という仕事に憧れを抱いていて、諦めることができなかった。それがやっと叶ったんです。その喜びは一生忘れることがないでしょう。

 そしてなにより、所属して1カ月でプロデビュー。これ、結構すごくないですか? 当時のぼくは、「あれ? もしかして波がきてる……?」なんて思ったものです。でも、それはただの勘違いだと思い知らされます。

 それから4年間、まったくオーディションに受からなかったんです!

 声優のオーディションにはふたつの形式があります。ひとつは「テープ・オーディション」。あらかじめ送られてくる原稿を読み上げ、それを録音した音源で審査してもらう形式です。もうひとつが「スタジオ・オーディション」。これはさまざまな声優が、入れ代わり立ち代わりスタジオを訪れて、制作スタッフさんたちの前で原稿を読み上げる形式のものです。

 なかには原作者さんやクライアントさんがいるケースもあり、とても緊張します。ちなみに、ぼくの初めてのスタジオ・オーディションは当時大ヒットしていたライトノベルが原作のアニメタイトルでした。

 あまりのビッグ・タイトルを前に案の定、なかばパニックになってしまい……結果は散々。そして、それから4年間、オーディションに落ち続ける地獄の日々がはじまるのでした……。

今週の一言:夢が叶った瞬間のことは
今でも忘れられません

構成協力=五十嵐 大 写真=干川 修 スタイリング=小林かおる ヘアメイク=川口愉里恵
衣装協力=ミックスメッシュワンピース(gomme/GOMME HOMME) 2万4200円/ラフォーレ原宿店 TEL 03-3796-4336

第13回につづく

しらい・ゆうすけ
1月18日、長野県生まれ。2011年に声優デビュー。2015年に出演した『美男高校地球防衛部LOVE!』で注目を集め、以降、『アイドルマスター SideM』『アイドリッシュセブン』『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』などの話題作への出演が相次ぐ。「理想の緑」をブランドアイコンとする、オリジナルアパレルブランド【MIDORI】も立ち上げたほか、YouTuberとしての活動もスタートし、「しらいむチャンネル」で自由気ままな動画も投稿中。
公式Twitter:@shirai_universe
公式YouTubeチャンネル:しらいむチャンネル
MIDORI公式サイト:アパレルブランド