「白井悠介のなんとかなるさ」⑮「白井さん、本当は声もっと低いの!?」

小説・エッセイ

公開日:2020/7/20

 2017年、ぼくの人生を大きく変える一大プロジェクトが始動しました。そう、ご存じの方も多いであろう『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』です。

 声優がキャラクターを演じるだけではなく、なんと作中でラップも披露するという前代未聞のこのプロジェクトは、想像を上回る大ヒット! 参加者のひとりとしてこんなことを言うのはちょっと照れもあるんですが、その規模は社会現象と呼ぶに相応しい勢いを見せ続けています。

 ぼくがそこで演じたのは飴村乱数(あめむら・らむだ)というキャラクターです。

 このプロジェクトへの参加はオーディションで決まりました。

 現場ではラップ披露も必要で、「大丈夫かな……」と不安になりつつも、なんとか全力を出し切りました。

 その結果、見事合格! おっしゃー!!! と思いながら、届いた資料をよく読んでみると、あれ……こんなキャラクターいたっけ? そこにはピンク色の髪の毛をした、小柄で可愛らしい男の子が描かれていたのです。それが飴村乱数でした。

 でも、これまでにこんなキャピキャピした役を演じたことがありません。どちらかというとクールな役が多かった。なので、率直に思うわけです。

 ……これ、なにかの手違いじゃないですか!?

 本気で心配になったぼくは、事務所を通じて確認をしました。すると、「飴村乱数をぜひ白井さんにお願いしたいんです」とのこと。いや、そんな風に言っていただけるのはめちゃくちゃうれしいんです。でも、不安もありました。

 ただ、そこで思ったのはやっぱり「なんとかなるさ!」。

 アフレコでは普段使わない音域を無理やり出しました。それこそ、脳の血管が切れちゃうんじゃないかと思うくらい必死で。ラップだってほとんど歌ったことがありません。そもそも、ぼく、リズム感ゼロななんですよ! そんな人間がどうしたらいいの!?

 でも、これが不思議なもので、どんどん慣れていくんですよ。高音域での発声も、リズミカルなラップも、やればやるほど馴染んでいく。いつの間にかぼくは、自然に飴村乱数を演じられるようになっていきました。

 そして蓋を開けてみれば……びっくりするほどの大ヒット!! ライブを開催すれば大勢のファンの方が集まってくださり、一人ひとりの声優が披露するラップにノッてくれます。さらに、『ヒプマイ』をきっかけにぼくのことを知ってくれる方がめちゃくちゃ増えました。なかには、ぼくが出演した過去の作品までさかのぼってくれる方もいて、「え、白井さんって本当はもっと声低いの!?」なんて声も届きます。そういうコメントは、声優冥利に尽きるんです。いろんな声が出せる声優になりたいと思っていたので、飴村乱数はぼくの声優としての幅を広げてくれました。本当に感謝してます。

 しかも、『ヒプマイ』はまだまだいろんな展開を予定中。今後もぼくの新しい一面がお見せできるんじゃないかな。想像するだけでワクワクしてます。みんな、期待しててね!

今週の一言:オネーさん、ぼくのラップ聴いてくれた~?

構成協力=五十嵐 大 写真=干川 修 スタイリング=小林かおる ヘアメイク=川口愉里恵
衣装協力=ミックスメッシュワンピース(gomme/GOMME HOMME) 2万4200円/ラフォーレ原宿店 TEL 03-3796-4336

第16回につづく

しらい・ゆうすけ
1月18日、長野県生まれ。2011年に声優デビュー。2015年に出演した『美男高校地球防衛部LOVE!』で注目を集め、以降、『アイドルマスター SideM』『アイドリッシュセブン』『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』などの話題作への出演が相次ぐ。「理想の緑」をブランドアイコンとする、オリジナルアパレルブランド【MIDORI】も立ち上げたほか、YouTuberとしての活動もスタートし、「しらいむチャンネル」で自由気ままな動画も投稿中。
公式Twitter:@shirai_universe
公式YouTubeチャンネル:しらいむチャンネル
MIDORI公式サイト:アパレルブランド