親の言葉が大きく影響する時期はいつ? 子どもの自信の土台を作るには…/自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て①

出産・子育て

公開日:2021/4/30

自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第1回です。わが子を「見守る」子育て、待望の第2弾が登場! 子どもの「勉強」「遊び」「生活習慣」「人間関係」について具体的に事例を紹介しながら、子育てで知っておきたい“コツ”を紹介していきます。

自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て
『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(小川大介/KADOKAWA)

原則1「自信」を持つ

▼「自信のある子」とは、どんな子?

 私が考える「自信」とは、「自分は自分、これでいい」という感覚です。

「これでいい」というのは、「自分はいろんなことに取り組んでいける」「学んで成長していける」という、「自分に対する信頼感」を持っている状態です。

 これは、「いい結果が出せたから」「成績がいいから」といった尺度で判断するものとは違いますし、「このままでいいんだから、放っておいて」などと周囲を拒絶して内にこもることでもありません。すごく穏やかで、落ち着いた心の状態とでも言いましょうか。未来に対して前向きでリラックスした気持ちでいられることです。

 自信のある子は、ほかの子の出来をうらやんだりしません。「すごいね」と一緒になって喜んで、「ぼく(私)もこんなことできるよ」と自分を素直に、無邪気に表現します。自信のある子は、人の考えを否定しません。「そうなんだ、私(ぼく)とは違うんだね。ふーん、面白いね」と興味を持ちます。何事にも素直に興味を示せるので、とても学び上手です。何より、毎日が楽しそうです。

▼赤ちゃんは自信のかたまり

 ここで少し、子どもが自信を獲得するプロセスについてお話ししたいと思います。

 正確に言うと、「生まれながらの自信を手放し、再び獲得するまでのプロセス」です。

・生まれながらに持っている100%の自信(赤ちゃん〜幼児期)
 ↓
・他人と自分を比べて、自信が揺らぎ始め、意識が外に向く(3〜9歳ごろ)
 ↓
・「自分はこうだ」と思えるようになり、自信を育て始める(8歳ごろ〜)

 生まれたての赤ちゃんはすべてが「自分中心」です。そばにお母さんがいたら、抱き寄せてもらえると信じていますし、自分が要求したときにおっぱいがもらえないなんて、考えてもいません。これは、圧倒的な自信によるものです。

 少し成長して3歳ごろになると、様子が変わってきます。周囲のことが見えてきて、ほかの子と自分の違いを感じ、「自分」を意識し始めます。

 自分を意識するということは他人も意識するということですから、人が気になり、人から自分がどう見られているかが気になります。ここで赤ちゃんのころから持っていた無条件の自信、「自分はいつも大事にしてもらえる」と信じ込んできた100%の自信が揺らぎ始めます。

 これが意識が自分の外に出ていく「ファーストステップ」で、その後、徐々に「自分はこういうとき楽しい」「自分はこういうことが好き」「自分がこういうことをするとまわりが喜んでくれる」といった「自分自身の発見」を重ねていきます。

 この年齢の子どもには自己分析は難しいですから、周囲の大人や友だちからかけられる言葉によって自分を理解します。ですから3歳から9歳ごろまでの子どもにとって、特に親の言葉はものすごく影響力があるわけです。

 こうして「自分」を作りながら、自信を獲得する段階へと移行していきます。

▼一度は自信の破壊が必要

 赤ちゃんのころに持っていた100%の自信を、みんな一度は壊します。

 これは悪いことではなく、成長するのに欠かせない破壊です。

 心理学の用語に「全能感」という言葉がありますが、簡単に言えば「何でも自分の思うままになる」と信じている状態のことで、子どもによく見られる状態です。

 自信を一度壊さないと、子どものときの全能感を持ったままで大人になりかねません。これは周囲からするとなかなか面倒な人です。

 都市部でよく目にする例ですが、私立の小学校に通っていて、学校の授業で恥をかかないように前もってあれこれ習い事で準備をさせてもらうなど、お金にものを言わせて手取り足取り育てられた結果、他人と自分を比べて自信が揺らぐ経験がない子もいます。

 自信が揺らぐ経験に乏しいと、家の中のスタンダードが、外の世界でも当たり前だと思うようになってしまいます。

 あいさつができない、学校の先生にどこか上から目線の態度を示す、思い通りにいかないとすぐにやる気を失ってしまう、そういうお子さんたちの中に、こういう家庭環境の子がわりと見受けられます。赤ちゃんの自信のままで育ってしまうというのは、とても危ういことなのです。

▼親の言葉の影響が特に大きいのはいつ?

 親の影響が大きい3歳から9歳の時期は、親のちょっとした言葉がけや態度ひとつで、自信の土台を作ることができます。

 たとえば、親子で一緒にお笑い番組を見ていて、大笑いしていたとします。

「すごく楽しい!」「面白い!」と思ったとき、子どもはきょろきょろっと親の顔を見るときがあります。これは、「今の楽しい気持ち、これでいいのかな?」と、ちょっぴり不安になって、親の反応を確認しようとしているのです。

 そのときに、大好きなお父さんやお母さんが同じように笑っていたら、「あ、よかった、同じなんだ!」と安心します。

 このときに親御さんが「今の面白かったね」などと声をかけてあげると、子どもの「このままの自分でいい」という気持ちを育んでいくことができます。ささいなことですが、そういう積み重ねが自信につながっていきます。

 自信は、「自分軸」、つまり、経験や価値観に基づいた自分なりの判断基準を持つために不可欠なものです。自信があれば、自分の意思を持ち、自らの人生に主体的に関わっていくことができるようになります。

<第2回に続く>

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