テストで100点をとった子どもに「すごい、天才だね!」と声をかけてはいけない理由

出産・子育て

更新日:2021/7/8

子どもの心を強くする すごい声かけ

著:
出版社:
主婦の友社
発売日:

 テストで失敗したり、大事な試合でミスしたり、お友だちと喧嘩したり…子どもたちの心というのはなにかとダメージをうけて傷つきやすい。親としてやさしく励ましたつもりが「自分には無理!」と逆ギレされてしまうことも…。そんなとき親がかけるのにふさわしい「声かけ」ってあるの?

「ストレスに弱い、自信がない、すぐあきらめる子でも大丈夫! 心が弱いと思える子ほど、親の声かけでどんどん変わります」というのは、書籍『子どもの心を強くする すごい声かけ』(主婦の友社)の著者・足立啓美先生。ポジティブ心理学の専門家である足立先生によれば、親は子どもが抱いたネガティブ感情を否定せず、「(それを)どう受け止め、どう声かけをするか」に注意するといいそう。その結果次第で「レジリエンス」(=逆境や困難で折れたりへこんだりしても、そこから立ち直るしなやかな心の強さ)を育てることができるといいます。

 本稿では、本書から一部抜粋して、「成長マインドセットを育てる方法」についてご紹介します。

子どもの心を強くする すごい声かけ
『子どもの心を強くする すごい声かけ』(足立啓美/主婦の友社)

成長マインドセットを育てる方法

「失敗は新しいことをやり遂げるために、誰もが通る道」と説明しても、なかにはなかなか受け入れられない子どもたちもいます。アメリカの心理学者、キャロル・S・ドゥエック博士が提唱する「マインドセット」という概念から、その理由がわかります。マインドセットとは、個人の行動や態度を決定する物事のとらえ方や、考え方、信念のことです。ドゥエック博士は、「人は誰もが生まれたときは学習者である。赤ちゃんはみんな、好奇心いっぱいで世界の探索を始める。しかし、私たちは、結果を強調しすぎたり、恐れを抱かせたりすることによって、自由学習者を非学習者に変えてしまうことがよくある。どうすれば、人は生涯、学習者でいられるのだろうか」という問いを持って研究を進めました。

 その結果、次のような2つのマインドセットを発見したのです。

①「知能、才能、スキル、性格や対人関係は柔軟で変化可能」と考える「成長マインドセット」
②「知能、才能、スキル、性格や対人関係は固定的で変化しない」と考える「固定的マインドセット」

 私たちは、さまざまな領域において異なるマインドセットを持っています。たとえば「自分は勉強では伸びしろがあるけれど、スポーツはダメだ」など、ジャンルによって、異なったマインドセットを持っていることがあります。同じ認識でも、固定的マインドセットと成長マインドセットを持つ人それぞれで、会話の中で使う表現が次のように変わります。

固定的マインドセットを持つ人…「自分は〇〇が得意だ・苦手だ」
成長マインドセットを持つ人…「〇〇は得意ではないが、練習すれば上達する」「〇〇は苦手だけど、努力すれば理解できる」

 成長マインドセットを持つ人は、その名のとおり、「自分の持つスキルや才能は成長する可能性がある」という話し方をします。また、自分の性格についても、固定的マインドセットの人は「自分がせっかちなのは生まれつきだから、しかたがない」と言う一方、成長マインドセットを持つ人は「辛抱強くできるときもある。この部分を伸ばせばいい」と考えるのです。このマインドセットは私たちの行動にどのように影響するのか? それをあらわしたのが、次のような図です。

子どもの心を強くする すごい声かけ

「やる気がない」の正体

 固定的マインドセットの持ち主は、「努力はムダ」であり、「努力をすると自分がダメな人間と認めることになる」ととらえ、「それは恥ずかしい」という感情を持ち、「挑戦しない」という行動をとります。84ページで「とらえ方が感情を決め、その先の行動も決める」とお伝えしましたが、ここでもその連携がはっきりしています。

 親は行動だけを見て「なぜやらないのかしら?」と感じますが、その前提にあるとらえ方と感情を見れば、それも納得です。「ほらほら、やってみようよ!」と、行動だけを変える声かけをしても、子どもはやる気を出しません。実際に、固定的マインドセットを持つ子どもたちからは、「どうせやったって無理」とか、「失敗したら恥ずかしい」という声をよく聞きました。

 対照的に、成長マインドセットを持つ子どもたちは「努力は何かを得るためには欠かせない」ととらえますし、努力することを誇りに思うのです。成長マインドセットを持つ子も、失敗したらもちろんつらい気持ちにはなりますが、「自分の能力は伸ばすことができる」と信じているので、再度挑戦することを考えます。

 

成功したとき、失敗したときの声かけ

「うちの子は何に対しても無気力で……成長マインドセットが育つとは思えない……」と思われた人もいらっしゃると思いますが、心配ありません。成長マインドセットは育てることができます。そのカギは「成功したときと、失敗したときの声かけ」です。

 たとえば、子どもが毎日コツコツと勉強をがんばって、テストで100点をとったとしましょう。そのとき「すごい、天才だね! やっぱり才能があるね」と声をかける人は、多いことでしょう。しかし、こうした能力や才能をほめる声かけは、意外なことに固定的マインドセットを育てることになってしまうのです。なぜなら、子どもたちはこのような言葉を聞くと「才能があるかないか、頭がよいかどうかで自分の価値が決められるんだ」というメッセージを受けとるからです。

 成長マインドセットを育てるには、能力や才能ではなく、努力と過程に注目した言葉がけが重要です。「テストまでの勉強計画を立てて、粘り強く、勉強にとり組んだね」「毎日放課後はテスト勉強をがんばってきたよね。100点とれてどんな気持ち?」というように、努力してきた過程を認める声かけをすることで、「努力することで力は育つんだ」という成長マインドセットを育てることができます。

 

「成長マインドセット」を育てる声かけ

 では、子どもが失敗をしたり、うまくいかなかったりしたときには、どんな声かけがよいのでしょうか? そのポイントは、「まだ」という言葉にあります。

「うまくできなかった」「失敗してしまった」と子どもが感じているとき、「今はまだ、うまくできなかったね」「まだ難しいところがあったね」と声をかけましょう。「今はまだできないけれども、これから練習や工夫を重ねればできるようになる」というメッセージを伝えることになります。

 そのうえで、失敗から何を学び、今後はどんなことをすればよいのかを、一緒に考えていくと、成長マインドセットを育てるよい訓練になるので、おすすめです。

 

誰かのためにと思える力

 中高生になったら、成長マインドセットを育てる先にもう一つ意識していきたいことがあります。それは、個人的な成長に注目した成長マインドセットの発展形としての「貢献マインドセット」です。貢献マインドセットを持つ人は、自分が成長することで、自分が世界に貢献できると考えます。そして、意味ある貢献を行うことで、幸せや達成感を感じます。

 成長マインドセットで育てた能力は、自分だけが何かを得て勝ち抜くために使うのではなく、他者をサポートするために、みんながよくなるために活用する――そんな貢献マインドセットを持つことで、子どもたちは目的意識を強く持ち、それが逆境や困難を乗り越える力にもつながります。

<第5回に続く>

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出版社:
主婦の友社
発売日:
ISBN:
9784074473045