絶望から立ち直るカーネギーの話/マンガでわかる「自分を動かす」技術⑧

マンガ

更新日:2021/8/9

わかってはいるけど、「動けない」「やめられない」「続けられない」あなたへ!「自分を上手に動かす方法」を知れば、良い習慣がウソみたいに簡単に身につき、人生が思い通りになる! 精神科医ゆうきゆう氏の「心理メソッド」を人気漫画家Jamさんがマンガ化! 『マンガ版 ちょっとだけ・こっそり・素早く「言い返す」技術』に続いて、『マンガでわかる! 気分よく・スイスイ・いい方向へ「自分を動かす」技術』から全9回にわたって連載をお届けします。

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自分を動かす技術

 ご存じの方も多いと思いますが、アンドリュー・カーネギーは、アメリカの有名な実業家です。カーネギーは鉄鋼会社を設立し、大成功を収めて「鉄鋼王」と呼ばれました。その純資産は、現在の価値に換算して、何と約3000億ドル。日本円にするなら30兆円です。ケタが違います。とにかくカーネギーは大成功を収めました。

 さて、あなたは、彼のような人生を歩みたいと思うでしょうか?

 実を言うと、彼の人生は、そこまで幸せではなかったようです。

 なぜならカーネギーには、こんなエピソードがあるからです──。

人生に絶望したカーネギーは、ある夜拳銃を……

 ある夜のこと。彼はあまりに多くの悩みを抱えて、「もう、どうしようもない……!」と苦しんでいました。そして、「自殺をしよう」と思い立ったのです。

 手段は「拳銃で自分の頭を撃ち抜く」こと。そう決心した彼は、護身用の拳銃が入っている引き出しを開けました。するとその中には、拳銃の他に、便せんセットがありました。そこで彼は思いつきます。

「そうだ。自殺するのなら、遺書を書いておかないと」

そして遺書を書いている際、こんなアイディアが浮かびました。

「自殺するからには、誰もが納得する理由があるべきだ。その理由をすべてここに書いてみよう」

 彼はすべての悩みを列挙してみました。

「この私がこんなに苦しくて、自殺するほど絶望に追い込まれているのだから、全部書いたら数百……いや千はいくのではないだろうか……!」

 そう思いながら、彼は書いていきます。

●政治家から圧力がかかり、会社が危機的状況にある
●不倫相手が「子供を認知して」と言ってきた
●親戚の全員が何らかの問題を起こしており、それらをもみ消さなければいけない
●甥が警察沙汰を起こして、身柄を引き取りにいかなくてはならない
●妻から「今夜食事に付き合ってくれないなら離婚」と言われている……

 色々と悩みが出てきます。まぁ、こうして見ると、結構ハードなものもたくさんあります。しかし、果たして「自殺しなきゃいけないレベルか?」と問われると、必ずしもそうとは言えないはずです。カーネギーも書きながら、うっすらそれに気がついてきました。

 さらに悩みの数も重要でした。彼が全部書き尽くし、もうこれ以上ないと思った時……その数は70ほどしかありませんでした。いえ、70って、普通の人からしたら多いと思うかもしれませんけれども。ただ、カーネギー自身は数百、いや、千はあると思っていたので、それは結局ただの幻想で、現実的にはそこまでの数はなかったというわけです。ただその70ほどの悩みが、次々と頭に浮かんでは消えていく……という状況だったため、まさに無数に悩みが存在しているように思えたのでしょう。

 そしてカーネギーはそこまで書いた悩みを見て、ふと思いました。

「このくらいなら、何とかできるのでは……?」

 そう。それこそゲームに例えるなら、把握できないほどの数のモンスターに攻撃されている……と思っていたところ、実は雑魚キャラ数匹だった、というような状況です。「この程度だとハッキリ分かれば、戦える!」と思ったのかもしれません。

 そして彼は、悩みを書いた便せんを、問題ごとに小さくちぎり、

◎明日解決できること
◎来週以降に解決できること
◎来月以降でも大丈夫なこと
◎解決できないこと

 というように分けました。「解決できること」は着手すれば次々消えますし、また「解決できないこと」は、何もできないと諦めるしかありません。しかし、何もできないと明確に分かれば、逆に安心にもつながります。

 そしてその結果、彼は自殺することなく、83歳まで生きたのです。このカーネギーの話は「絶望から立ち直り、前向きに生きるヒント」として本当に素晴らしいエピソードだと思うのですが、いかがでしょうか。ここから分かることは、2つあります。

〔結論1〕誰でも悩んでいる

 1つは、「カーネギーほど成功した人間でも、悩み、自殺まで考えるほど追い詰められることがある」ということ。このエピソードは、決してカーネギーが「若い時」の話ではありません。すでに巨万の富を築いていた時の話です。どんなにお金を稼いでも、そして社会的に成功しても、それだけで完全な幸せはない、というわけです。

 誰でもどんな状況でも、悩み苦しむことはあります。ですから、もしあなたが悩んでいる時に、「これは私が成功していないからだ」とか「自分だけふがいないからだ」「自分はあの人に比べてダメだ……」なんて無意味な劣等感に心を惑わせたりする必要は一切ありません。それよりも、あなたの全精力は悩みの解決につぎ込むべきなのです。

〔結論2〕どんなことにも対処法はある

 さらにもう1つ。それこそが、どんなに悩みがあったとしても、それを明確に把握するだけで、充分に気持ちはラクになり、次に取る行動が分かるということ。

 とにかく問題点を列挙してみて、向き合ってみて下さい。それだけでもあなたの進むべき方向が分かります。

 そしてほんの少しでも進みさえすれば、さらに気持ちも晴れやかになり、解決なんてできそうにないと思っていた悩みも小さくなっていることに気づくはずです。

Point 「漠然とした不安」は書いて整理する

<第9回に続く>

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