どんな話も1分間で要約できる!? アウトプット上手になる練習をしよう!/本当に頭がいい人の思考習慣100④

ビジネス

公開日:2021/9/2

齋藤孝著の書籍『本当に頭がいい人の思考習慣100』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第4回です。現在、インターネットで容易に情報を得られるようになり、AIの進歩で「考える」という行為の必然性も減るような状況にあります。一方で、自身の能力に対して投資する傾向にあり、「頭がよくなりたい」と考えている人も増えています。そこで、ここでは教養・学びを自ら得て「頭がよくなる」とはどういうことかを理解し、その状態に常に昇華できるクセをつけるための習慣の身につけ方をお教えします。

『本当に頭がいい人の思考習慣100』を最初から読む


本当に頭がいい人の思考習慣100
『本当に頭がいい人の思考習慣100』(齋藤孝/宝島社)

思考習慣001 要約
キーワードを3つ選び1分間で説明する

どんな話でもエッセンスは1分間に要約できる

「頭がいい」といわれる人の特徴として、アウトプットが上手であることが挙げられます。頭のいい人とは、要約力があって説明がうまい人ともいえるでしょう。

advertisement

 頭の中で考えていることを、言葉や文字、あるいは行動にして相手に伝える行為は、私たちが日々行っている基本的なアウトプットの形です。

 身近なところでいえば、昨日観た映画や、読んだ本の中身を友達に伝えるとき、頭のいい人はわかりやすく、おもしろく説明することができます。

 アウトプットの技を磨くには、話の肝となるワードを3つ選び出し、そのキーワードを使って1分間という時間枠の中で説明する習慣を身につけることです。これは「説明術」といってもいいでしょう。

 ひとつのワードに費やす時間は15秒。15秒とはテレビCM1本分の長さをイメージするとわかりやすいでしょう。つまり、テレビCM3本分で状況を述べて4本目で結論を示すと、1分で無駄なくコンパクトに話を要約することになります。

 この方法を使えば、どんな難解なテーマであろうと、話を1分でまとめることはできるのです。

ストップウォッチで話す練習をする

 私は大学の教員養成の授業でも、1年生が入学してくると、必ずこの「1分間説明法」を練習してもらいます。そして、15秒という時間を身体で覚えて話すように伝えます。最初は、ほとんどの学生が15秒という時間をもてあましてしまいます。

 15秒というのは実は意外に長く、言い換えれば、多くの情報を伝えるには十分な時間であるといえるのです。15秒の3つのポイントを、計1分でまとめて説明できるようになると、アウトプットの能力は格段にアップします。アウトプットの能力が長けているということは、相手の時間を奪わないということにもつながります。

思考習慣002 逆算
アウトプットに必要な分を無駄なくインプットする

多くの人はインプット過多

 インプットとアウトプットの量を比較すると、その割合は「インプット9:アウトプット1」くらいではないでしょうか。あるいは、気がつくとインプットばかりしていて、アウトプットはゼロに近いという人もいるでしょう。現代人の多くは「インプット過多」といえそうです。

 しかし、それではインプットした情報に埋もれてしまい、頭の中は常にパンク状態。知性がうまく回転してくれませんから、アウトプットも上手にできません。

 また、大きな論文やレポートを作成する際に、とにかく何でもかんでもインプットしておき、あとで時間をかけてその情報を整理して……というやり方では、頭が回転しないだけでなく、膨大な時間を無駄にしてしまいます。

 一方、頭がいい人は、「何をアウトプットするか逆算して考えながら、必要な情報を選んでインプットをする」というやり方をしています。

 たとえば、ある仮説の妥当性を論文にする(アウトプットする)には、何を調べる必要があるのか。膨大なデータの中から調べるべきものを無駄なくセレクトすると、漠然とインプットしていたときの10分の1ほどの時間と労力で足りることに気づくでしょう。

 無駄な作業がなくなると、インプットの際の集中力も高まり、スピード感も格段にアップします。

インプットとアウトプットは同じくらいの量が理想

 このように、取ってきた魚を無駄なく全部食べ尽くすように、インプットとアウトプットの量の差が少ない、すなわちインプットを無駄にしないということが、頭のいい人のやり方といえます。

 別の言い方をすれば、「インプットしてきたものを、どんどんアウトプットしていく」という考え方もできます。

思考習慣003 分解
難しい問題は小分けにして考える

難題にビビらないのは段取り上手だから

 私たちは日々の暮らしの中で、しばしば大きな壁にぶち当たることがあります。「これを乗り越えるのは大変だ!」「困難な問題に直面してしまった!」と考えるとき、人はパニックになりがちです。

 一方、そういうときにも決して「ビビらない」というのが頭のいい人の特徴です。そういう人はどんな局面でも大きく動揺することなく、冷静に対応できます。

 その理由は、頭のいい人は瞬間的に「段取り」を組むことができるからです。

 どんな困難なテーマでも、そのテーマを分析したうえで細かく区切って、「まずはこのステップをクリアし、それを踏まえて次にこのステップを……」と、段階を踏んで対処しているのです。つまり、対処する準備ができているので、パニックになって慌てることがないのです。

小分けした不得手な部分に集中投下する

 大きな問題を大きなままの形として受け止めてしまい、すべてを同時に解決しようとすると、私たちは手も足も出ないという絶望的な気持ちになります。

 しかし、小さく分けて分解すると、一つひとつは何とか解決できそうな気持ちになります。その小さい部分だけに徹底して取り組めば、ひとまずその部分だけは解決できます。

 ひな鳥が空を飛ぶのは大変ですが、まずは止まり木に立つことから、その次に助走、羽の使い方……というように、小分けされた順序を踏みながら、彼らは飛ぶ術を会得します。

 私はチェロを弾くのが趣味なのですが、うまく弾ける部分と弾けない部分を小分けにし、苦手な部分を集中的に練習するというやり方をしました。

 そうすると、やがてその苦手な部分がいちばん上達し、結果として曲全体が滑らかになりました。大きな問題に直面しても、その問題を小分けして小さくし、一つひとつを冷静に分析することができれば、落ち着いて対処することができるということなのです。

<第5回に続く>

あわせて読みたい