【注目本を時短で読む!】なぜあなたは頑張っても幸せになれないのか?『99.9%は幸せの素人』

ビジネス

更新日:2022/2/17

ロングセラーや話題の1冊の「読みどころ」は? ダ・ヴィンチWeb編集部がセレクトした『99.9%は幸せの素人』(星 渉、前野隆司/KADOKAWA)の書籍要約をお届けします。

99.9%は幸せの素人
『99.9%は幸せの素人』(星 渉、前野隆司/KADOKAWA)

この本を読んでほしいのはこんな人!

いくらがんばっても毎日が楽しいと思えない人
自分の人生や暮らしを人と比べて劣等感を抱いてしまう人
「お金を稼がなければいけない」という思いが強く、ストレスが多い人

3つのポイント

要点1
ほとんどの人は、自分が幸せになるための方法を知らない。日々、頑張っているのに充実感がない人は、自分を苦しめる習慣を繰り返しているのかもしれない。科学的根拠に基づく「幸せになるための知識」を得れば、自分で自分のことを今以上幸せにできる。

要点2
人生で豊かな人間関係を築く人は幸福度が高いと、データで証明されている。人との良好な関係を作る「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌を増やす習慣や、さまざまなタイプの友人を持つことが有効だ。

要点3
まずは自分にとっての幸せは何かを知り、自分の幸福度を測ることで、幸福へと近づける。「カレンダー・マーキング法」などの自分の幸せの価値観を把握するテクニックで、自分にとっての幸せな生き方を知り、実践へと移せる。

▼プロフィール
星 渉(ほし わたる)
株式会社Rising Star代表取締役。1983年仙台市生まれ。大手損害保険会社で勤務するが、岩手県で東日本大震災時に被災。時間が有限であると実感し「自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決意、2011年に起業。「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」をコンセプトに、ビジネスコンサルタント、作家として活動。講演会、勉強会には10,000人以上が参加し、手がけたビジネスプロデュース事例や育成した起業家は623件にのぼる。ゼロの状態から起業する経営者の月収を6カ月以内に最低100万円以上に至らせる成功率は91.3%。著書に『神メンタル』『神トーーク』(ともにKADOKAWA)など。

前野隆司(まえの たかし)
山口生まれ、広島育ち。1984年東京工業大学卒業、1986年同大学大学院修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。博士(工学)。ダンサー、フォトグラファー、作家としても活動する。専門は、幸福学、幸福経営学など。人々を幸せにするための生活づくり、ものづくり、コトづくり、組織づくり、地域づくり、教育に関する研究を行う。『7日間で「幸せになる」授業』(PHP研究所)、『年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?』(河出書房新社)など、著書多数。

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あなたがこんなに頑張っているのに幸せになれない理由

 家族のため、会社のために遅くまで働くなど、多くの人が頑張って生きている。しかしその頑張りは、「幸せになるための頑張り」として科学的に正しくない。なぜかというと、ほとんどの人が幸せになるための方法を知らないからだ。ここ40年で「幸せに関する研究」が急速に進み、自分で自分を今以上に幸せにできる時代になった。本書では、そんな科学的裏付けに基づく「幸せになるための知識」を紹介する。

 最初に伝えたいのは、幸福にまつわる残酷な事実だ。人は誰でも自分にメリットのある選択をしようと思っている。しかし周りに影響を受けて、自分が幸せにならない選択をしてしまう。そして、自分の行動を正当化して、同じ行動を繰り返してしまう。これこそが、あなたが日々頑張っているのに、人生に満足感や充実感を得られない理由だ。

 あなたが「正しい」と思っていることが本当に正しいのか、考えてみてほしい。「安定した収入があるほうが安心する」「お金よりも大切なことがある」といったことを信じていないだろうか。それはあなたを苦しめる思い込みかもしれない。本書は科学的根拠に基づいて、その思い込みの誤りも指摘する。

年収800万円を超えると幸福度は上がらない

 「お金がすべてではない」という考え方もあるが、お金が幸福度を上げるのも事実だ。収入が増えれば増えるほど人は幸せになるという研究結果がある。しかしこのデータは同時に、年収800万円を境に、それ以上年収が増えても幸福度は変わらないことも示している。またある調査では、年収が2倍になっても幸福度は9%しか上昇しないという結果が出た。睡眠時間や家族との時間など、犠牲を払って収入が倍増することをイメージすれば、幸福度が上がらないことに納得できるだろう。

 お金に関する幸福度を上げる方法として、「幸福度が上がるお金の使い方」を勧めたい。それは「経験」を買うこと。人生に思い出として残る経験にお金を使えば、幸福度は上がるのだ。しかも経験で得た満足感は時が経つにつれて増えるため、幸福は長続きする。また、世界の研究や調査で、寄付など、誰かのためにお金を使うことでも、幸福度が上がることが証明されている。

「嫌われない道」を選べば幸せになれる

 「人に嫌われても構わない」と言う人もいるが、嫌われない道を選ぶほうが幸せになれることが科学的にわかっている。75年にわたるハーバード大学の調査では、幸せな人生を歩んだ人の上位10%は、人生で豊かな人間関係を築くことができていたという結果が出ている。このデータが示すように、温かな人間関係を築ける人が幸せを手に入れるのだ。

 良好な人間関係を築くためには、「人を愛する力」が必要だ。それを身につける方法は、「幸せホルモン」であるオキシトシンを増やすこと。ハグなどのスキンシップや心温まる映画を観ることや、人に親切にすることで、オキシトシンの分泌を高められる。

 「友達の多様性」も人の幸福度に関係する。幸福学の研究では、友達の数よりも、さまざまなタイプの友達がいることが幸福度に影響を及ぼすことがわかっている。興味のある講座で学ぶなどの方法で、良い人間関係を築くのがおすすめだ。幸福度が高い人の近くにいる人は幸福度が高いというデータもある。一緒にいて幸せな気持ちになれる人との友人関係を築くことが大切だ。

幸せな結婚生活には努力が不可欠

 幸せな人生というと結婚もテーマにあがるが、パートナーの存在は幸福につながるのだろうか。結婚している人としていない人のどちらが幸せかというと、それは本人の努力次第だ。結婚に関する研究結果で共通しているのは、結婚したこと自体の幸せは2~3年しか続かないこと。人間の脳には順応という機能があるため、おのずと相手がしてくれることに対する「慣れ」が、結婚後の幸福度を下げる。そのため、この「慣れ」に抵抗する努力によって、幸せを感じる状態を継続させることが必要だ。

 具体的には、「愛している」と伝えることや、感謝のプレゼント、相手への関心を示すことを忘れないなどの努力だ。夫婦間で定期的なミーティングを行って関係を良くする努力をするのも良い。イベントの企画や、皿洗いや散歩、晩酌などの日常の時間を共有するのもおすすめだ。一緒に体験を共有することで、夫婦生活の幸福度はアップする。

「ポジティブ思考」を目指すだけでは幸せになれない

 「ポジティブであること」を最良ととらえる考え方もあるが、ポジティブ思考だけで幸福度は高まらない。人の幸福度には、「ポジティブ感情」「ネガティブ感情」「人生満足度」が関係しているからだ。ポジティブ感情を考えるときにイメージしてほしいのが半沢直樹だ。彼の「倍返しだ!」という台詞は、彼の抱く「将来への希望」を象徴している。さらに目的のためにできることを着実に実行していく過程で個人的成長を実感、さらにポジティブ感情が高まる。おすすめなのは、1年間にできたことを50個書き出すことだ。自分の成長を実感することでポジティブ感情を育てられる。

 幸福度を左右するネガティブ感情にも対処が必要だ。ネガティブ感情には心配事や不安が影響することがわかっているが、心配事のうち実際に起こるのは13%、本当に解決できない心配事が起こる可能性は3%というデータがある。この「心配事は起こらない」という事実を知れば、ネガティブ感情を減らせる。心配事を書き出し、1ヵ月後にそれが起きたかを記録、心配事は起きないと実感する「ジャーナリング」の方法がおすすめだ。

 人生の満足度は、自分へのハードルをどれだけ下げられるかによって決まる。自分のいいところも悪いところも認めてあげることが、人生の満足度に影響するからだ。そんな「自己受容力」を得る方法として、自分で自分の労をねぎらうのが有効。具体的には、毎日寝る前に鏡に映った自分に、人からかけられたらうれしい言葉を言う。「内側前頭前野」に働きかけるこの科学的手法で、自己受容力が向上する。

「自分にとっての幸せは何か」にたどり着くには?

 自分にとっての「本当の幸せ」を知ることも重要だ。幸せの基準はイメージしにくいため、なりたくない状態を考えて反転させるとわかりやすい。その結果を検証するには、前野氏が提唱する「カレンダー・マーキング法」が有効だ。毎日手帳やカレンダーに、1日の幸福度を◎○×で示して、1行で理由を書く。フィードバックすることで、思いがけない自分の幸せの基準に気付ける。

 また、幸せの気持ちが長続きする「コスパのいい幸せ」を狙ってほしい。家族の健康など、他人と比べずに喜びを感じられるものを「非地位財」と呼ぶが、この非地位財から得られる幸せは長続きしやすい。反対に、他人と比較して喜びを感じるものが「地位財」だ。地位財による幸福は、現状に慣れて上を目指そうとしたり、自分より優れているものを見つけてしまったりすることから、長続きしない傾向がある。

 しかし、非地位財だけを追えば幸せになれるかというとそうとも限らない。地位財の長所は、短期的な行動力を引き出すこと。非地位財は、継続的に努力する力を与えてくれる。異なる原動力となるため、状況やその時々の自分の幸福に合わせて、ふたつを使い分けるのが理想的だ。

人生の時間の多くを占める仕事で幸せを得る方法

 人生の多くの時間を費やす仕事も幸福度に影響を与える。仕事から幸せを得るためには、何が必要なのだろうか。まずは、お金に意識を向けずに時間の使い方を考えてほしい。ある調査によると、時間に意識を向けさせたグループのほうが、お金に意識を向けさせたグループよりも人との関係作りに時間を使おうとする傾向があった。時間に意識を向けることで、稼いだお金を使って過ごす時間を考えるなどして、幸福度高く仕事に取り組めるようになるのだ。

 また、夢や目標を持つ人ほど幸福度が高いこともわかっている。「人生の目標」「何のために働くのか」などを明確にして仕事をすれば、目標に近づく実感や幸福感を得られる。

 仕事に意義を感じて幸福を得られるかは、本人の意識次第だ。仕事をする人には、報酬が目的の「ジョブ」、名誉や昇進を手にしたい「キャリア」、仕事をする意義が明確な「コーリング」の3つのタイプがいて、コーリングの人が仕事の幸福度が高い。コーリングの感覚で働くために有効なのが「ジョブ・クラフティング」だ。その方法はまず、仕事で関わる人の範囲を広げて仕事の意義を見出すこと。2つ目は、仕事の意味を拡大し、誰のどんな未来を作っているかに意識を向けること。3つ目は、仕事の価値を高めるための変化を加えて、やりがいを持つことだ。

 世界では今、「幸せ」に関心が高まっている。世界経済フォーラム創設者のクラウス・シュワブ会長が、「人々の幸せを中心とした経済に考え直すべきだ」と述べたように、世界は今、大きな転換点を迎えている。幸せを企業活動の軸に据える大手企業も増えてきた。幸せの研究結果を実社会で活かすムーブメントが起こる中で、これから、人々が人類史上もっとも幸せになれる時代がやってくる。

文=川辺美希

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