「完全出社主義」「副業禁止」旧態依然の職場から浮かび上がる問題点とは

ビジネス

2018/2/26

『働き方の問題地図』(沢渡あまね・奥山睦/技術評論社)

 ネット時代でAI化も進む中、社会は大きく変わりつつある。時代の波を感じ取り、働き方への不安を抱いている人も多いことだろう。『働き方の問題地図』(沢渡あまね・奥山睦/技術評論社)は、そんな手探りしている人に向けた、働き方改革へと導く本。

 著者は、「業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士」の沢渡あまねさん(男性)と、時代の働き方を先取りしてきた女性起業家の奥山睦さん。タッグを組んで生まれたこの本は、旧態依然の職場の常識にスポットを当てながら、新しい働き方を提案しているのが特徴だ。

 巻頭から、日本の職場を襲ういくつもの問題点に目を向けさせつつ、本題へと入っていく。その6章から成る内容は、さすがは専門家と思わせる情報が満載。一部をかいつまんで紹介しよう。

問題点「グローバル化できない職場」

 日本の企業は「その人の時間を買う」という発想が強く、海外の企業は「その人の専門性を買う」という。そこで浮き彫りになるのは、外国籍社員から見た日本の非合理的な職場事情。例えば、どこまで自分の仕事かがうやむやな正社員の働き方を見て、外国籍社員は首をかしげてしまう。

 そんな価値観の違う外国籍社員とうまくやっていくコツも詳しく指南されていて、職場に限らず、海外の人とのコミュニケートにかなり役立ちそうだ。

問題点「完全出社主義」

 海外に比べて、日本の労働生産性の低さが問題視されているらしい。それに大きく影響しているのが、通勤時間の長さ。

 出社主義の働き方は、仕事以外でも多忙な現代人を疲弊させてしまう。そこで注目されているのが、自宅や出先で仕事をする「テレワーク」という働き方。しかし、企業としては歓迎しない向きが多い。

 ここでは、働き手本人が、少しずつテレワークに馴染んでいきながら、それを成功させる方法を提案。海外では、リモートワークは当たり前とのことで、日本がどれだけ柔軟性に乏しいか考えさせられてしまう。

問題点「副業禁止」

 AIの発達により、将来的に仕事が激減し、年金もさほどもらえないのでは?という社会不安から、近年、副業への関心が高まっている。企業はしぶりがちだが、実は副業は会社にとってもメリットがあるという。

 そこで必要となるのが、働く側が副業をする際の注意点や、自分の強みを再発見する「キャリアの棚卸」だ。

 これを基に作成する「キャリアプランシート」「アクションプランシート」を掲載し、これらのシートに現時点から長期にかけての目標と、それを叶えるための方法を記入して使うことを勧めている。

 その他に新鮮なのが、「キャリア権」についての情報だ。聞きなれない言葉だが、これは、働く人が職業生活を通じて自己実現し、幸福を追求する権利のこと。「職業・職種が財産の時代」から、「キャリアが財産の時代」へと転換していくことを、今から意識しておいた方が良さそうだ。

 これ以外にも、「正社員だけ」「男性主体」「フルタイム前提」の問題点を挙げるとともに、その解決策を明示している。それぞれの章ごとに図やイラストを多用し、多岐にわたる理論立った専門知識は、目をみはるものがある。

 それだけに、最後の結びの「働き方をソフトランディングさせなければならない時期は、必ず、誰にでもやってくる」という言葉が、重みをもって胸に迫ってくる。これからの時代の働き方へとシフトチェンジしたいなら、この本が大きな手がかりを与えてくれるだろう。

文=星野ユリカ