少女たちは、なぜ男の身体を切断するのか……「人体解剖」描写によって、異例の掲載中止となった猟奇ホラー『辱(にく)』

マンガ

公開日:2018/9/11

『辱(にく)』(窪茶/小学館)

 2016年1月、「裏サンデー」に掲載された第0話の“残酷描写”が問題視され、公開から間もなく、異例の掲載中止となってしまった作品がある。それが『辱(にく)』(窪茶/小学館)だ。本作はその後、第1話、第2話と掲載を進め、単行本1巻で完結した。……が、2017年には続編となる『辱-断罪-』(小学館)を発表。上下巻にて、衝撃の物語を完結させた。

 さて、本作のいったいなにが問題視されたのか。それは“カニバリズム”を想起させる描写に他ならないだろう。

『辱(にく)』のプロローグとなる第0話では、謎の美少女が若い男を次々と“切断する”シーンが描かれている。そして会話の節々から読み取れるのは、どうやらそれを食す目的で切断している、ということ。泣き叫ぶ男と、血まみれになった美少女。そのコントラストは非常に残虐で、これから始まる物語の行方を予感させるには充分だった。

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『辱(にく)』では、謎の村に迷い込んだ大学生3人組が、そこに住む少女らに捕らえられ、殺害されていく様子が描かれた。彼女たちはなぜ殺人を犯すのか。その理由は明らかにされない。最後に残った主人公も、逃げ出せたと思いきや、絶望的なラストを迎えることになる。

 そして続く『辱-断罪-』では、「失踪した大学生たちを探す」という目的で村を訪れた探偵・勝己を主人公に、新たな物語が紡がれる。そこで描かれるのは、村に住む少女たちと勝己との、血で血を洗うような攻防だ。やがて明かされる、村にまつわる言い伝えと彼女たちの正体。しかし、それが明らかになったとて、その所業を理解することはできない。男たちの身体をただの物体、食糧として捉え、無残に解体していくさまは、まさに“鬼”のようだ。

 人は常識の範疇にない出来事に遭遇したとき、最も恐怖を覚えるだろう。それが幽霊や化物といった怪異の姿を成して目の前に現れることもあれば、あるいは同じ“人間”として現れることもある。そして、同じ人間なのに理解ができない、という状況が一番恐ろしいのだと思う。

 はたして、勝己は無事に村から脱出できるのか。その行方は、ぜひ単行本で確かめてもらいたい。ただし、そこに待ち受けるのは、圧倒的な絶望だけであることを覚悟の上で。

文=五十嵐 大