運ばれてきたのは、四肢を切断された恋人……ショッキングな展開から幕を開ける、サスペンス・ミステリー

アニメ・マンガ

2018/11/3

『多重人格探偵サイコ』(大塚英志:原作、田島昭宇:作画/KADOKAWA)

 学生時代、ふらっと寄ったコンビニで手にとったマンガがある。パラパラ立ち読みをすると、衝撃的なコマが目に飛び込んできた。そこに描かれていたのは、四肢を切断された若い女性。彼女は発泡スチロールに入れられ、主人公のもとにクール便で運ばれてきたのである。なんだこれは。驚愕すると同時に、その作品が頭から離れなくなってしまった。後日調べてみると、件の展開が問題視され、その作品の「連載を中止しろ」という声もあがったのだとか。

 一度読んだことがある人ならば、きっと忘れることがないであろう、上述のエピソード。これは『多重人格探偵サイコ』(大塚英志:原作、田島昭宇:作画/KADOKAWA)でのワンシーンだ。

 本作は1997年に連載がスタートし、2016年に完結した人気作。人が人を食べてしまうカニバリズム殺人や、むき出しにした脳みそに花を植え付けるという事件、女子高生による集団自殺といった、およそ理解不能な猟奇的事件を追うひとりの青年を主人公にした、サスペンス・ミステリーだ。

 物語の前半では、毎回、こういった猟奇事件が発生し、その謎を解く様子が描かれる。殺人の手順や犯行動機、犯人の正体など、どれもこれもがインパクト大。ミステリーとして上質な展開が待ち受けている。

 そして、後半になるにつれて焦点があてられるのが、国家レベルでの犯罪だ。要人に用意された“スペア”の存在、人格転移、プログラムされた人格……。やや陰謀論めいた展開だが、圧倒的なリアリティをもって描かれているため、決して「ない」とは言い切れない。むしろ、こんな恐ろしいことが水面下で計画されているのではないだろうか……と不安を煽られてしまう。

 連載時には刊行ペースが遅く、ファンをやきもきさせていた本作。しかし、完結したいまは一気読みも可能。他ではなかなか読めないショッキングな世界に、足を踏み入れてみては?

文=五十嵐 大