特集番外編1 2013年11月号

特集番外編1

公開日:2013/10/4

特集番外編1 2013年11月号

一生どうでしょうします!

編集M

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2013年4月9日。北海道の放送局・HTBのHPから、あるメッセージが発信されました。
「しばらく旅に出ます」――。それは番組ディレクター藤村さんからの3年ぶり『水曜どうでしょう』新作の撮影開始の発表。
「待ってました!」と全国の『水曜どうでしょう』ファンこと“藩士”の皆様が歓喜されたであろう、その旅の発表の日……! 私は北海道に居ました。

ことの発端はその何日か前に遡ります。
大泉洋さんの著書『大泉エッセイ』の担当編集である私は、都内でエッセイ取材のため、大泉洋さんにお会いしておりました。
そこで、ご本人に「『大泉エッセイ』の見本誌は11日にお渡しできます」とお伝えしました。
『大泉エッセイ』は4月19日発売。新刊本は事前に編集部に、見本として数冊届きます。私はそれを受け取り次第、著者である大泉さんにお渡ししようと考えておりました。
しかし、ふと大泉さんが「その日、どこにいるか分からないのよ」とおっしゃられたのです。
「え、どこにいるか分からないって……!?(混乱)」
「9日から12日間……日本にいるかも分からない」
「ええ!?」
「連絡もつかないところの可能性もある」
「いや、ちょっと待ってください、12日間ということは、『大泉エッセイ』の発売日にすらどこにいるか分からないんですね!?」
「ああ!ほんとだ!発売日! どこにいるか分からないから、書店もいけない!」
「まさか、旅に行かれるんですか!?」
「……本当にどこにいるか分からないの……」

こうして、私は「記念すべき初エッセイ本の発売日に著者がいない、というか作家がどこにいるのか作家自身も分からない」という――十数年編集者の仕事をしていて「初めて」という事態に陥ったのでした(笑)。

『大泉エッセイ』は発売日の半年以上前からコツコツと製作しておりました。本に対する大泉さんの意気込みは凄まじいものがあって、連ドラの撮影でお忙しい中、徹夜徹夜の執筆を繰り返しながら、勢力を注いで本の製作に取り組まれておりました。また大泉さんが大ファンである、あだち充先生が装画のイラストを手がけてくださったこともあり、本の仕上がりを本当に楽しみにしておられました。
だから担当としては、刷り上がった本を、いの一番に著者にお届けしようと心に決めていたのです。
しかし本の発売日にまさか『どうでしょう』とは!! 待ちに待った『どうでしょう』とは!!

「分かりました」。「どうバカ」の私は全てを理解し、そう言って、帰社するなり気付けば印刷会社のご担当者様に、必死で「一冊で良いです!何とか9日朝までに仕上げてください!一冊で良いんです‼」と無茶苦茶なお願いをしていました。(印刷会社さん、ごめんなさい)
そして旅の発表の日の朝、ギリギリ刷り上がったばかりの2冊の本を持参して、急ぎ東京から札幌へ向かいました。超特急でタクシーを飛ばし、別の番組の収録中の大泉さんのもとへ。無事本をお渡しすることが出来ました。(事務所のスタッフ様、ありがとうございました)
その後、安堵しつつ、『おにぎりあたためますか』のプロデューサー様にお会いしに、HTBさんへ伺うことに。すると社内には、藤村さんと嬉野さんがいらっしゃいました。お二人のデスク周囲には……物凄い量の荷物がありました(笑)。

10月2日から『水曜どうでしょう』の新作が放送されます。17年前、北海道の地方局から生まれたこの深夜バラエティ番組は、瞬く間に全国にファンを広げ、一度レギュラー放送を終えた後も、不定期に新作を届けてくれています。9月には8年ぶりのイベント『水曜どうでしょう祭』が開催され、全国から5万人もの番組のファンが北海道に集結しました。
『水曜どうでしょう』は出版界にも沢山のファンがいます。今回の『ダ・ヴィンチ』の特集では“どうでしょう班”のインタビューや「水曜どうでしょう祭」のルポに加え、直木賞作家・朝井リョウさんによる『どうでしょう』をテーマにした書き下ろし小説、有川浩さん、佐々木倫子さんらによる寄稿「マイベスト企画」など、たくさんの作家・漫画家の先生方に企画にご参加頂きました。
また、内田樹先生と藤村・嬉野Dの鼎談、スタイリスト小松さんや樋口了一さんインタビューなど、30ページを超えるボリュームに。
さらに表紙は“どうでしょう班”に飾っていただきました!「どうでしょう祭」の2日目の昼に、会場ステージ上から(「寝釣り」コールの中)表紙と特集扉の撮影をさせて頂きました。

『水曜どうでしょう』は、これまでの既存のテレビ番組の概念をブチ壊す、唯一無二の面白さを持つ番組です。しかし、「枠組み」からズレたものを作るということは、どの業界でも同じだと思いますが、決して安易でないのです。
『どうでしょう』はレギュラー放送終了後も全国で再放送され続け、視聴者数を増やし、DVDも累計350万枚を突破するほどまでの人気番組となりました。
しかし、番組が「大きく」なればなるほど、『どうでしょう』のあの面白さを貫くための、戦いもあったと思うのです。
今回の特集では、鈴井さん、大泉さん、藤村さん、嬉野さんにインタビュー取材をさせていただきました。
そこで、私は思いました。『どうでしょう』は変わらず『どうでしょう』だ、と。
きっとずっとこの先も「一生どうでしょう」させてくれるに違いない、と。
特集のサブタイトルには、大泉さんの名言「一生どうでしょうします」を入れさせて頂きました。インタビュー記事、“藩士”の皆様にはぜひご一読頂けますと嬉しいです。

最後になりましたが、「水曜どうでしょう祭」で本当にお忙しい中、企画をご了承下さったHTBの皆様、そして藤村様、嬉野様、さらに鈴井さん、大泉さん、事務所の皆様に感謝致します。本当にありがとうございました。

さて、いよいよ『水曜どうでしょう』最新にして最強の旅が始まります!
長々と書いてしまいましたこの「特集番外編1」ですが、ちょっとだけ何かしら、繋がる瞬間があるかも知れません。
新作放送と共に、ぜひダ・ヴィンチ特集をぜひお楽しみください。


 

 

こんなにおもしろいものがあったのか!!!

編集K

 

 今月のダ・ヴィンチは2大特集でお届けしております。

『水曜どうでしょう』と『黒子のバスケ』。

どちらもファンの熱狂的な支持を、質量ともに集めているコンテンツですので、否が応でも力は入ります。

30ページ超の大特集2本立てという“異例中の異例”のボリュームとなったダ・ヴィンチ11月号。

大変幸せなことに、そんな2大特集をどちらも担当させて頂くことができました。

ここでは『水曜どうでしょう』について振り返っていきます。

>

そもそも私と『水曜どうでしょう』の出会いは大泉洋さんの担当である編集Mとの出会いでもあります。
「おい、お前つまんねーからこれ見て勉強しろ」
そう言って渡されたのが『水曜どうでしょう』のDVDでした。
2年前のことだったと思います。
番組の名前は知っていましたが、まったく観たことがなかった。

(即日感想を伝えないとMは激怒するだろうなぁ)と、
後輩脳を全開にさせながら自宅へ戻り、
ビールを飲みながらリモコンをぽち。

「♪チャーン チャチャチャチャチャラララーン チャラララララー チャーン ジャジャジャジャーン ジャーン ジャジャジャジャーン♪」

!?

なんだこの福助!?

『水曜どうでしょう』って、シュールな番組だったんですかっ!!??(←失礼)

オープニングに続く前枠も、正直どう観たらいいのか分かりませんでした。
(いま振り返ってみると、それくらい観たことのない映像だったんだと思います)

それでもしっかりと観た上で感想を言わないと、
絶対にMにどやされます。

座椅子に腰を据え、
まずは編集部内で人気の高かった「シェフ大泉」と「原付」を観ているうちに……

もう寝られなくなりました(笑)

気がつけば外はもうすっかり朝。

いそいそと仮眠をとって出社し、早退!

帰宅後すぐに「サイコロ」シリーズや、
個人的にずっと行ってみたかった「アラスカ」など、
次々と観ていくうちに、また朝がやってきました。

……こんなにおもしろいものがあったのか!!!

借りたDVD全部を1週間ほどで特典映像まで舐めるように見終え、
一気に“どうバカ”と化した私をMは気持ち悪がっていました。

それでも自分自身、この年になって何かにここまでハマるとは……
正直びっくりしています。

今ではオープニング曲を耳にするたびにニヤリとし、
前枠・後枠を繰り返し観る、立派な“どうバカ”になりました。

Mさん、本当にありがとう!

さて、そんな『水曜どうでしょう』ですが、
弊誌が常日頃お世話になっている作家先生方の間でも、
“藩士”を自負する方は非常に多いのです。

昨年、あるマンガ家さんのお仕事場に取材のため伺うと、
デスク周りにはあの“黄色いヤツ”が鎮座しているではないですか。
大小あわせて4体も!?

もちろん取材そっちのけで盛り上がってしまいますよね。

そんなところからヒントを得て、
今回の特集では多くの作家、マンガ家の先生方にご協力を頂きました。

朝井リョウさんの小説をはじめ、
こんな風にどうでしょうを捉えられるのか!!
という驚きに満ちたページが盛りだくさんです。

出版界からの「熱烈なラブコール」がどうでしょう班の4人に、
そしてどうでしょうを愛する“藩士”のみなさまに届くように、
と願いを込めて。

……と、上でMが熱弁を振るっておりますので、
私はこの辺りで失礼します。

あ、最後にひとつ宣伝です(笑)

『黒子のバスケ』も面白いですよ!
『SLAM DUNK』や『DRAGON BALL』好きな方には本当にオススメです。
『週刊少年ジャンプ』本誌では一つの区切りとなる“ラストバトル”に突入したところですので、
いまが本当に読み時です。
こちらもあわせてお楽しみください。

それでは。