栗山千明でドラマ化「行動心理捜査官」シリーズ完結編。12件の殺人犯 元心療内科医が獄中から放火を手引きした謎を解け

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/4/14

ラスト・ヴォイス
ラスト・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』(宝島社)

 真相が明かされるまでの過程にハラハラドキドキさせられる刑事小説は、たくさんある。だが、「行動心理捜査官・楯岡絵麻」シリーズ(佐藤青南/宝島社)は、その中でも異彩を放っている。なぜなら、嘘をつく時などに、ほんの一瞬だけ現れる「マイクロジェスチャー」や微細表情がカギとなり、真実が判明するという一風変わったストーリーとなっているからだ。

 本シリーズは、俳優・栗山千明の主演で連続ドラマ化もされた作品。行動心理学を専門にする女性刑事・楯岡絵麻が相手の仕草や行動パターンから嘘を見破り、鮮やかに事件を解決する。そんな大人気シリーズの完結巻『ラスト・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』(宝島社)が、この度発売された。本作で絵麻は信頼できる同僚たちと共に、史上最恐の強敵に挑む。

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 事の発端は、絵麻とペアを組んでいる刑事・西野圭介の婚約者が住むアパートが放火されたことだった。幸いにも死傷者は出なかったが、犯人の特定に繋がる遺留品はなく、目撃証言もあやふやなものばかり。捜査の糸口すら見つからない状況に、刑事たちは頭を抱えてしまう。

 だが、絵麻はある人物の犯行であると確信していた。その人物とは、明らかになっているだけで12件もの殺人を行ったとされている元心療内科医の連続殺人鬼・楠木ゆりか。

 楠木は絵麻によって逮捕され、現在は拘置所で刑の執行を待つ身。犯行は不可能に思えるが、アパート放火事件が発生した後に絵麻が面会をした際、自身が黒幕であることをにおわせるマイクロジェスチャーが見られたのだ。

 楠木は拘置所の中から、誰にどう指示を出して事件を起こさせたのか…。悩んだ絵麻は公安部に所属する元恋人・塚本拓海の力も借りながら、おなじみの同僚たちと共に事件解決を目指す。

 そんな中、同僚でベテラン刑事・筒井の娘が何者かに刺されてしまう。立ち去る時、犯人が口にした「手を引け」という言葉を楠木からのメッセージだと捉えた筒井は、楠木と獄中結婚をした記者の畑中をマーク。畑中には疑わしいマイクロジェスチャーが見られないと絵麻が訴えても耳を貸さず、独自に捜査を進めていく。

 命がけで事件の解明に挑む、絵麻たち。果たして、その姿をあざ笑う真犯人や協力者の正体とは…?

 本作では楠木の犯行と思われるアパート放火事件の捜査中に、一筋縄ではいかない別の難事件も発生。元プロ野球選手が起こしたとされる強姦未遂事件と強盗事件、どこかきなくさいにおいがする溺死事故などを、絵麻は鋭い洞察力を活かして捜査。読者は、事件の裏に隠された真実に衝撃を受けると同時に、人の心の複雑さを痛感させられることだろう。

 なお、本作には楠木以外にも過去作で活躍したキャラクターが続々と登場。意外な人物の再来に、往年のファンは「まさか、あの人が再登場するなんて…!」と驚きの声を漏らすはずだ。

 互いに心の専門家である楠木と絵麻の最終対決は、息をのむ展開に。登場人物たちの軽快なやりとりも楽しみつつ、事件の行方を見届けてほしい。

文=古川諭香

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