相楽 樹「“今の自分にできることはなんだろう?”と考えながら、 一作一作を積み重ねていきたいと思っています」

あの人と本の話 and more

公開日:2016/6/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で、しとやかな次女・鞠子を演じる相楽樹さん。現在公開中のオムニバス映画『スリリングな日常』では、鞠子の真逆の妖しい女子大生役に挑戦。芝居への思い、読書傾向など、さまざま訊きました!

「知らないことの真実の姿を垣間見ることができる。それがドキュメンタリーの良さですね」

 本は断然ドキュメンタリー派。それも日本の題材より海外のものが好きだという。

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「お薦め本に選んだ『ヤノマミ』は、6月公開の映画『ふきげんな過去』でもご一緒させていただいた前田司郎監督が薦めてくださった本なんです。今、読んでいる『戦争は女の顔をしていない』もそう。『とと姉ちゃん』の撮影が戦争時代に入ってきたので、当時のことを知りたくて、前田さんに相談したところ、この本を教えていただきました。みずから志願し、最前線の兵士として第二次世界大戦を戦ったソ連の女性たちの衝撃的な独白が綴られています」

「濃い作品を好む傾向がある」という相楽さん。小説では中島らもの作品が好きだという。

「作者ご自身の型破りな人生が、登場人物にも文章にも表れているようで。特に『ガダラの豚』が好き。読むたびに、その世界のなかにどっぷりと入り込んでしまいますね」

 芝居の世界もまた同じ。映像でも舞台でも、誰かの人生を演ずることに没頭し、そこに喜びを見出しているという。だが10代で女優デビューをした頃は、なかなかそうもいかなかったようだ。

「当時は、カメラの前で芝居をする自分に恥ずかしさを感じてしまうなど、“大変だな”と思うことのほうが多かったんです。
 明確な答えってないんですよね、役にしても、芝居に対する姿勢にしても。“私はどうすればいいんだろう”と悩むことを、何度も何度も繰り返してきました。けれど、その苦しみを越えたとき、楽しさを感じている自分に気が付いた。そのなかで、作品に出たい、出演作をひとつひとつ積み重ねていきたい、そのために、今、私ができることはなんだろう?と考えるようになりました。」

 それは、NHK連続テレビ小説への出演によって“相楽樹”の顔と名が全国区となり、次々に活躍の場を広げる今も変わらないという。一作一作がいつも正念場――相楽さんの演技に滲むそんな姿勢が自然と見る人を惹きつけ、そして元気を与えているのだろう。

(取材・文=河村道子 写真=齋藤 葵)

相楽 樹

さがら・いつき●1995年、埼玉県生まれ。2010年、ドラマ『熱海の捜査官』で女優デビュー。現在、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』に出演中。主な出演作は、映画『リアル鬼ごっこ4』『私の男』『グッド・ストライプス』など。映画、ドラマ、舞台、CM等で活躍。映画『ふきげんな過去』が6月より公開。

 

『ヤノマミ』書影

紙『ヤノマミ』

国分 拓 新潮文庫 710円(税別)

アマゾンの最深部で独自の文化、風習を守り続けているヤノマミ族。150日間ともに暮らした著者が見たものは──2009年、NHKスペシャルで放送され、大反響を呼んだ番組ディレクターが綴ったノンフィクション。まっさらな視点で語られる現実は、文明社会を生きる人々のなかに眠る“原始”に何かを訴えかけてくる。

※相楽 樹さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ7月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『スリリングな日常』

監督/頃安祐良、熊坂 出、熊澤尚人、豊島圭介 出演/U-KWON(Block B)、相楽 樹、落合モトキ、金子ノブアキ、秋山成勲ほか 配給/マジックアワー 6月25日(土)より、ユーロスペースほか全国で順次公開 
●都会の日常、そこに潜むスリリングを描いたミステリー短編4作から成るオムニバス作品。気鋭の実力派監督4人と個性豊かな俳優陣の化学反応が観る者を不可思議な非日常へと誘い出す。
(c)イトーカンパニー