あだち充作品と『水曜どうでしょう』との共通点は“なりゆき”だった!?

芸能

更新日:2013/4/26

 今月19日に発売された大泉洋の『大泉エッセイ ~僕が綴った16年』。大泉たっての希望で装画はあだち充が担当した。あだち充が自著以外の表紙イラストを描くのはこれが初めて。二人の邂逅を記念して『ダ・ヴィンチ』5月号では奇跡の対談が実現した。

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【大泉】 今日は、僕の“あだち先生に会いたい”という思い一つで、このような場を作っていただき、本当に感謝しています。

【あだち】 とんでもない。僕も映画(『探偵はBARにいる』)と『水曜どうでしょう』を勧められて拝見していたので、お会いするのがとても楽しみでした。

【大泉】 あっ、そうなんですか! ちなみにどの作品をご覧に?

【あだち】 「夏野菜」と「アラスカ」の回でした。

【大泉】 ほぉー、それは僕が言うのもなんですが、いい作品をお選びになりましたね(笑)。

【あだち】 本当に面白かったです。「アラスカ」ではトランプに似顔絵を描いてましたよね。あれがすごく上手で驚きました。

【大泉】 いやぁ、うれしいです! まさか先生に絵を褒めてもらえるとは……(ニンマリ)。それで、先生にお会いしたら絶対に伝えようと思っていたんですが、僕にとって『タッチ』と『ラフ』はバイブルでして……。

【あだち】 そうみたいだね。でも、なんでそんなに思い出があるの? (笑)。だって、ほかに好きな作家は本宮ひろ志さんや武論尊さんとかって聞きましたよ?

【大泉】 確かに男のロマンが描かれてるマンガが好きですね(笑)。だから、甘酸っぱい青春マンガはあだち先生しか読んでないと言っても過言じゃないです。

【あだち】 まぁ、そういう僕も、普段は『仁義なき戦い』とか『ゴッドファーザー』のような硬派な映画が大好きなんだけどね。

【大泉】 そうなんですか!? ……ヤクザ映画を好きな人が『ラフ』を描いていたのか……。

【あだち】 なんだ、書いちゃ悪いのか!?(笑)

【大泉】 いえ、全然いいです(笑)。ギャップに驚いただけです。

【あだち】 大泉さんが『ラフ』を読んでいたのは、何歳ぐらい?

【大泉】 浪人生の頃ですね。友人から借りて、夜中に一気に読んだんです。もう、大興奮でした! 昂る気持ちをどうしていいか分からず、家族が寝静まった家の中を一人で、こうウロウロしちゃって……(と、話しながら、思わず立ち上がって、その時の様子を再現)。それでも気持ちが収まらず、「なんだ、この熱い想いは!」と叫びたい気持ちでした。

【あだち】 分かった! 分かったからとりあえず座りなよ!(笑)

【大泉】 あ、すみません(笑)。と、まぁとにかく、ものすごく感動したわけです。それで聞きたいんですけど、こうした物語というのは最初から頭の中に全部あって作っているものなんですか?

【あだち】 いや、僕の場合はすべてなりゆきですよ。『水曜どうでしょう』とおんなじです。

【大泉】 いやいや、何、言ってんですか。『水曜どうでしょう』と一緒にしちゃダメでしょう(笑)。

【あだち】 本当に同じなんですって。例えば、最初にキャラクターを決めて、その後は“オーロラを見に行こう”っていうゴールしか考えてない。それまでの道のりは全部なりゆきです。

【大泉】 へぇ~、そうなんですか。でも、『タッチ』の最後の須見工との試合は神がかり的だと思うんですが、あれもなりゆき?

【あだち】 そうですよ。

【大泉】 僕なんか、舞台の台本で1カ月かけて1行も書けないことがあったのに……。

【あだち】 週刊誌だと待ってくれないからね。むりやり次の展開を考えることもありました。『タッチ』や『ラフ』はその適当さが偶然、上手くハマった感じなんですよ。でも、確かに須見工との試合は読み返すとよく出来てるよね。あの時は、神様が降りてきていたのかもね(笑)。

取材・文=倉田モトキ
(『ダ・ヴィンチ』5月号「大泉洋特集」より)

■書籍情報
タイトル:大泉エッセイ ~僕が綴った16年
著  者:大泉 洋
装  画:あだち 充
発 売 日:2013年4月19日(金)
価   格:1300円(税抜き)
仕   様:四六並製/352P
I S B N :978-4-8401-5167-2
発   売:メディアファクトリー