作者・大今良時が語る『聲の形』誕生秘話 自身の不登校が創作の原動力に【インタビュー】

マンガ

更新日:2015/1/26

鋭い観察眼で「許し」について考えていた

 母親が手話通訳者だったため、手話には幼い頃から親しんできた。また自身の体験も作品には盛り込まれている。そのひとつが、あまり学校になじめずに過ごした10代だ。

「私は友だちにものすごく恵まれていたと思います。おかげで、“友だち”というくくりに疑問をもったことはありません。ですが、学校生活は苦痛でした。私が通っていた学校は、とても伝統を重んじる学校だったのです。そのひとつが、連帯責任です。何にでも連帯責任を匂わされました。厳しい校風が、とにかく面倒に思えてしまって。最後の半年間は学校に行かなくなりました。それよりは、家で絵を描きたかったので」

 また理不尽な要求をする大人たちへの疑問もそのひとつ。彼女は、冷静に人間観察する目を幼いうちから備えていた。その大人びた視線は、作中に登場する西宮の妹・結絃のようでもある。

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「学校生活のなかで、先生の態度には、色々と考えさせられました。あるとき、男子がいたずらをして、ものを壊したのです。彼らは心から反省しているように見えましたが、それを先生はまったく聞き入れなくて。間違いに気がつき、謝罪したのにも関わらず、なぜ許されないのかと思いました」

 誰でも失敗してしまうことはある。その過ちは、どうすれば許されるのか。その疑問は、『聲の形』でも問いかけられている。物語の石田は、西宮をいじめ、転校を余儀なくした。人生を左右する大きなあやまちを犯したのだ。それに対し、何をもってすれば、当事者や周囲の人間は、許すのか…。

「私は、自分が間違っていたと気づいた時点で許してあげたいと思っています。けれど、例えばイジメをした石田のような場合、石田自身も、また周囲も彼を許さないでしょうね」

 その答えのひとつが、今回発売となった最終巻に描かれている。映画作りで集まった仲間は、石田のいじめの過去を知り分裂の危機になった。だが石田と西宮の行動により、絆はより強まったように感じた。 

 

▲小学校で学級委員長の川井みき。高校生になっても“いい子”キャラは続く (C)大今良時/講談社

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