背伸びしたい、応援したい、怖いもの見たさ… “思わず買ってしまう”心理

ビジネス

公開日:2015/10/8

『買う5秒前』(草場滋/宣伝会議)

 自分の周りを見てほしい、買ったのに使っていない。そもそも、なんでこんなもの購入したのだろうというものがあるのではないだろうか。

 そんな“思わず”衝動買いしてしまう人にオススメなのが、買い物をする直前の心理を書いた『買う5秒前』(草場滋/宣伝会議)だ。本書では“思わず”買ってしまう。“思わず”の部分の心理について書かれている。本書を読むことによって、これまで気付かなかった、自分の意外な心理に気付くことができるかもしれない。その一部を紹介しよう。

ちょっと背伸びしたいワタシ

 コンビニで雑誌を手にレジへ向かう。その時、元々買おうと思っていたものと違う雑誌を手にレジへ向かっていることはないだろうか。例えば新人のOLが『CanCam』を買おうとコンビニに入る、しかし目に入ったのは自分よりターゲット層が少し上の『AneCan』。ついつい手にとり、レジに持って行く。何が彼女を心変わりさせたのだろう。
 そこには「背伸びしたいワタシ」がいる。キャバ嬢の教科書として人気を博した『小悪魔ageha』。しかし、実際の主要読者は女子高生。その女子高生をターゲットに作られた『Seventeen』、こちらの主要読者は女子中学生。特に若い女性に現れる「背伸びしたいワタシ」。ターゲットを細かく絞っている女性ファッション誌のはずなのに、購入する層がズレてるのは「背伸びしたいワタシ」がいるからだ。
 購入5秒前に「背伸びしたいワタシ」がポンっと背中を押したことにより思わぬ衝動買いが生まれた。

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応援したいワタシ

 東日本大震災が起きた当初、福島県産の農作物は風評被害に悩まされた。国が定める検査に合格、安全というお墨付きをもらっているのに関わらず市場から敬遠された。
 確かに当時の消費者の気持ちにたてば福島県産と別の産地の食品が並んでいる時、つい別の産地の食品を手に取る気持ちはわかる。
 しかし、この風評被害は逆転の発想で乗り切ることができた。未曾有の大震災の被害に遭い困っている被災者を助けるため福島県産であることをアピールしたのだ。
 実際の例を紹介しよう。震災から1か月後の2011年4月初旬東京都中央区にあるアンテナショップ「福島県八重洲観光交流館」で福島県産の青果物フェアが催された。すると、アンテナショップには大勢の買い物客が押し寄せ、入場制限がかかるほどの大盛況となった。
 それは「応援したいワタシ」が現れ、購入者の背中を押したから。それまで避けていた福島県産を購入しようという衝動を起こさせたのだ。これまで購入したくないと思っていたものに対して、積極的な購入意欲を抱かせる。それほどまでに「応援したいワタシ」の衝動は強力なようだ。

“怖いもの見たさ”のワタシ

 2011年末、コンビニエンスストア「ファミリーマート」が発売した「スライム肉まん」を覚えているだろうか? ブログやTwitter上でも話題になり、発売から1週間で予定数量の100万個すべての出荷を終了した。
 このスライム肉まんの特徴はなんと言っても、食品に似つかわしくない鮮やかな青色だろう。着色にはクチナシが使われ、合成着色料は一切使われていない。中身も豚肉にタケノコ、玉ねぎといたって普通ではある。しかし、あの鮮やかなブルーは敬遠してしまう人も多いのでは……と思いきや大ヒット。なぜ、この正直、気味の悪い商品がヒットしたのだろう。
 それは、消費者の「“怖いもの見たさ”のワタシ」を刺激したからだ。“気味が悪い”という評判を聞けば聞くほどに気になってしまう心理がある。ホラー映画やお化け屋敷、怪談など顔を背けながらも気にしてしまうのと同じ原理だ。
「“怖いもの見たさ”のワタシ」が現れたことにより、衝動買いを促した。

 本書には62のシーン別に買う5秒前の心理が掲載されている。どれも、その気持ちわかる。と納得できるものばかりだ。これなんで買ったんだろう? と思うものが身の周りにある人は、ぜひ手にとってその時の心理を解明してみてはいかがだろうか。

文=舟崎泉美