1本580円も見下すべからず! ワインの良し悪し、味わいと香りのヒミツとは?

食・料理

公開日:2016/2/18


『30分で一生使えるワイン術』(葉山孝太郎/ポプラ社)

 ワインがますます身近になってきている。スーパーやコンビニには様々なワインが並び、TPPが発効すれば、さらに安く輸入ワインが楽しめるようになるようだ。とはいえワインは種類も値段もピンキリ。何となくハードルの高さから敬遠しているという人は少なくない。そんな考えは無用とばかりに、ワインの楽しみかたを説く本がある。

 ワイン・ライターの葉山孝太郎氏が著した『30分で一生使えるワイン術』(ポプラ社)だ。同氏は、「威張っていても、ワインは所詮、腹に入れるモノ」と鮮やかにワインの“格式”をはぎ取り、ユーモアを交えながらわかりやすく解説する。

高級ワインは「100パーセント果汁」!? 高いから美味しいというわけではない。

 結局のところ、ワインの味は好み。高級だからといってすごく美味しいかというとそうでもない。同氏によると、ワインの価格帯はざっくりと、1000円、3000円、1万円を境にした4つの区分にわけられるという。

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 そして、同氏に言わせれば1万円以上は10万円も100万円も同じ。大きな特徴としてあげられるのは、高価なワインほどアルコール度数と凝縮度が上がる。どういうことかというと、その解説がまたわかりやすい。

果汁3%のオレンジ・ジュースが1000円のワインだとしたら、果汁100%が1万円のワインだ。高くなると、水っぽさがなくなるし、色が濃くなるのだ。白ワインは、色が黄色に近くなる。赤の場合、香りが大きく、渋さが強くなって色も黒に近くなる。

 なるほど、果汁の少ないジュースも100パーセントもそれぞれ美味しいし、好き好きだ。なお、高級ワインは長期熟成するようつくられているので、若いうちに開けて飲んでしまうと白なら酸味がきつすぎ、赤なら渋すぎたりする。イギリス人のような「濃厚ファン」でない限り、美味しいとは思わないはずなのだそう。

 そもそもワインの原価は高くて1本1500円くらいで、さらに言えば3000円以上は150万円でも変わらないとも。価格は需要と供給の関係で決まるので、値段につられてはいけないらしい。

安さは正義。1000円以下のワインから気軽に楽しもう。

 同氏はまた、ワインの価値を絵画などの芸術品にたとえて解説する。つまり、必ずしも鑑定家が評価したり、有名人が描いたりした絵が万人にすばらしいと感じられるわけではなく、無名の達人画家が描いた絵画もいいものはいいし、それぞれの好みがあるもの。同様に、有名なワイナリーでつくられていなくとも、無名でもすばらしいワインはたくさんあるのだ。

 それに「1本580円といえど、生産者のプライドが詰まっている」と廉価ワインも見逃せないと指摘。というのも、日本の輸入代理店がコストパフォーマンスの良いワインを選び抜き、それをワインショップが厳選しているのだから、店頭に並ぶ1000円以下のワインにはそうした人々の誇りも詰まっていると解説する。世界中のワインを知る同氏は、そうしたワインをケース買いしては、「このワインは、1本23万円のル・パンみたい」と妄想して飲むのだそう。

 だから安くても「自分は安上がりだ」とか「味を知らないから」と卑下することはない。自分が気に入れば、堂々と「これは美味しい」と飲めばいいのだ。安いワインから、好みを見つけて、世界を広げていくのもいい。好みだから、人それぞれでいいのだ。

白ワインはレモネードと一緒。香りはハッタリで十分!?

 同氏の絶妙なたとえをもう一つ。白ワインの味わいかたについてだ。基本は、酸味と重量感の2つになるのだが、これをレモネードにたとえている。「酸味をレモン汁の分量」「重量感を砂糖の分量」に当てはめるとわかりやすいそう。なるほど、酸っぱいのが好きな人もいれば、甘いのが好きな人もいる。こちらも好みを知るのにとても役立つ。

 ただし、ワインは香りがとても大事。どんなに安いワインにも5、6種類の香りがあるのだとか。しかしながら、人間は動物の中でもとても嗅覚がニブイ生き物なので、最初の一瞬でキメないとすぐに鼻がバカになってしまう。そんな至難の業を極めるのは到底ムリ。ならばとばかりに、香りのポイントと表現方法をハッタリの通用度つきで説明する。

 赤なら、「ベリーの香り」という表現を基本に、プラムやアンズのような「赤いフルーツ」、「スパイス」「ハーブ」がキーワード。「スパイシーですね」「ハーブっぽい香りがします」といった具合だ。

 白なら、「リンゴ」「白い花」「白いフルーツ」が基本。フルーツなら白桃、ライチ、梨、グレープフルーツなどがあげられれば、プロの技なのだとか。こちらも「スパイス」「ハーブ」のキーワードは使い回せる。

 赤でも白でも、よくわからなければ、「果実味がある」で逃げるといい。「フルーティー」と同義ながら、プロ度が高く聞こえるのだそうだ。

 これらは同書のごくごく一部。タイトルのとおり、30分で読める人も多いかもしれないが、情報がぎっしり詰まっているうえ、笑いの要素がふんだんに盛り込まれているので、何度も読みたくなるほど。巻末にはちょっとしたワイン用語辞典も収録されているので、ワインの楽しくも実用的な参考書として重宝しそうだ。

文=松山ようこ