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NHKという制約の多そうな組織の中で、ヒットを連発させる名物プロデューサーのモットーは、「ま、いっか」


『折れる力』(吉田照幸/SBクリエイティブ)

 『折れる力』(SBクリエイティブ)は、テレビプロデューサーである吉田照幸さんが仕事の流儀をしるしたエッセイ。

 吉田さんは1993年NHKに入局。現職は正確に言うと、NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー。2004年に『サラリーマンNEO』を企画、以後全シリーズの演出を担当。2011年には『劇場版サラリーマンNEO(笑)』の脚本・監督や、連続テレビ小説『あまちゃん』の演出も。2016年11月に公開した『疾風ロンド』映画版(原作:東野圭吾)の脚本・監督を務める。

 NHKという制約の多そうな組織の中にいるのに、みんなが知っているメジャーな作品ばかりを手がけ、ヒット連発って、どういうこと? 仕事の流儀をぜひ聞いてみたくなる。

 仕事は思い通りにいかないもの。それはテレビや映画の監督でも同じ。会社の事情があったり、環境が整わなかったりするときもある。吉田さんは、こんなときこそ「折れる力」が必要、という。自分の決めたやり方にこだわらず、別の方法を考えてみる。

「ま、いっか」。すると、案外おもしろいアイデアが出てきたりする。

 吉田さんのモットーは「ま、いっか」。理想を求める人にとっては「あきらめ」というふうにとられるかもしれないが、「あ、こういう方向もあるか」とか、「あ、ここはこんな感じかもなー」みたいに、ある程度、決断や価値に対して幅を持たせているということ。このぐらいの範囲に収まればいい、という幅があればあらゆる局面でさまざまな人のアイデアや意見を取り入れられる。すると作品にも幅が出てくる。結果オーライ!

 かくいう吉田さんも、入社時は報道志望だったし、強権的なリーダー時代もあったらしい。『劇場版サラリーマンNEO(笑)』担当の直後、「NEOね。来年ないから」と番組打ち切りの1本の電話連絡で、「自負していた価値」と「組織にとっての価値」のギャップを思い知り、その後、ドラマ『あまちゃん』を担当して、成長し続けるには自分をゼロにし続けなければならないことを悟ったという。「折れる」のが肝心、ということを身をもって知ったのだろう。

「ヒットの秘訣っていったい何?」と、ギラギラした、はやる気持ちで読み始めると、やや脱力するかも。肩の力を抜いて、リラックスして読んでみよう! 乾いた土が水を吸収するように、「ま、いっか」が体感できるような気がする。

文=塩谷郁子



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