たとえば猫のように気ままに暮らす女探偵がいたとして
公開日:2013/3/15
Forget-me-not (1)
ハード : PC/iPhone/iPad/Android | 発売元 : 講談社 |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:鶴田謙二 | 価格:540円 |
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はたから見れば「何をやってんだか」と思われることでも、当人にしてみれば真剣に取り組んでいることが多々あります。事件の大きさや影響は個人の価値観の委ねられ、その事の大きさの大小を決めているのです。作者である鶴田謙二という人物はその尺度をぼかすのがとても上手な方です。キャラクターが大事件に直面しているようで、それをごくごく個人的な事情に見せたり。実は大事件のはずなのに、当の本人は意外とのほほんと過ごしていたり。
日常の切り取り方がとても自然体なので、読者自身が「一体これは何と直面しているんだろう?」と不思議な感覚に陥ってしまいそうになります。今回もそんな鶴田マジックが遺憾なく発揮されている『Forgot me not』。何ゆえに「忘れないで」と問うのかは読んでからのお楽しみです。
主人公である伊万里マリエルは鶴田謙二お得意の「好奇心旺盛でちょっとずぼらな女の子」です。イタリアでワケありの探偵業を営む異邦人。そんな彼女がすんなりとイタリアの景色に溶け込んでいるのが何だか面白かったりします。変装上手で、神出鬼没、それでいて地元の警察のおじさんたちを抱きこむような愛嬌と茶目っ気があり、非常に愛されキャラなのです。
彼女が追っている2つのものが、おそらくはこの物語の大筋になりますが彼女自身さほど精を出しているわけでもなく、日常の暇つぶし程度に追いかけているので緊張感もあったものではないのが本作の「不思議な感覚」の原因なのでしょう(笑)。
本作には鶴田氏の十八番であるロマンティックなSFは一切と登場しませんが、伊万里マリエルとその取り巻き、またイタリアの町並みとの調和がほどよい心地よさを生んでいます。題して「伊万里と歩くイタリアの景色」と称しても違和感はないはず(笑)。
まずは本作を読むにあたり力を抜いてリラックスしてみてください。きっと伊万里があなたをちょっとした小旅行に連れていってくれるはずです。
伊万里マリエルはイタリアで静かに暮らす
何やら尾行中のようで…
伊万里のアンニュウインな自然体に何故か清涼感を感じる
ちょっとだらしないけど気にしない
変装上手だけど、何故か見抜かれてしまう伊万里
(C)鶴田 謙二/講談社