このミス大賞の冠は伊達じゃない! 元刑事の警察広報官が追う、因縁の誘拐事件
公開日:2013/5/2
64
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : 文藝春秋 |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:横山秀夫 | 価格:1,645円 |
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『空飛ぶ広報室』(有川浩)がドラマ化されましたね。「自衛隊なんてみんな知ってるのに、何を広報するの?」そんなふうに思った人もいるんじゃないでしょうか。
でも、どんな組織にだって広報はいる。捜査のイメージばかりが強い警察だってそう。『64』はそんな、元辣腕刑事の三上が因縁深い誘拐事件に広報官として直面するミステリーです。
警察における広報官の仕事はとにかく嫌われます。記者クラブの相手が主ですが、内部からは「情報を流しやがって」「記者と馴れあいやがって」と蔑まれ、記者からは「情報を隠匿する」「身内の庇い合いで不正を働く」と突き上げられる。
そのバランスをうまくとって社会への窓となる、そう決意し、刑事畑から外された悔しさを胸に職務を果たしていた三上でしたが、一人娘の失踪を機に仕事もプライベートもすべてが崩れ落ちていきます。そしてやがて浮かび上がる、未解決の“翔子ちゃん誘拐事件”、通称ロクヨンの陰と、新たな誘拐事件。
とにかく縄目のようにいくつものドラマが絡み合っていて、息つく間もありません。一つの厄介ごとが片付いた、ように見えたら次の事件が起き、それもままならないのに今度は家庭でもトラブルが起きる。どこで終息するのか、どこへ向かうが正解なのか、三上と一緒に翻弄されながら、最後に一筋の光を見つけていくのです。
警務部(広報)と刑事部、キャリアと地元警察官の対立などの理不尽な波に呑まれながら、三上が広報官として、警察官として、そして父・夫としての矜持を取り戻していく様にもぐっときますが、終盤の、誘拐事件の犯人を追うスピード感ある追跡劇はドラマティックかつ緻密で、大興奮。
ラストは人によっては不服かもしれません。解決されていない問題もあります。だけど私はこの小説を読んで「すべてがクリアになることだけが解決ではない」と知った気がします。
「このミステリーがすごい!」2012年大賞の冠は伊達じゃないのです。
余白やフォントまでカスタマイズできます。このタイプの書籍、いいですよね
未解決のまま14年が過ぎた“ロクヨン”
事件を探るうち浮かび上がった“幸田メモ”の存在。上層部は何を隠しているのか?
さらに、記者クラブの信用を失い、三上は窮地に立たされる
そして何もかもが不穏のまま、事件は起きる――