「キスで体が入れ替わる!!」のあおり文+αの魅力があるよ!
公開日:2013/5/31
「いいえ。このコミックは『転校生』の盗作ではなかったわ」
「いや。やつはとんでもないものを盗んでいきました。読者の心です」
あのですね。売り方にけちを付けるつもりはないのですが、帯の「キスで体が入れ替わる」というのと、作品紹介の「階段を一緒に転がり落ちて―」で避けている読者もいるんじゃないかと気がかりなんですよ。確かにね、キスをすると山田くんと白石さんの体は入れ替わりますよ。それに最初に入れ替わったのは、一緒に階段を落ちたのがきっかけですよ。
でも、そんなものは『らんま1/2』で水をかぶって変身したり、お湯で元に戻ったりするのと同じで、能力の発動条件をそう決めてあるというだけの話。本質ではないです。
物語は、今紹介したように不良(といっても本当のワルではない)の山田くんと優等生の白石さんが入れ替わってしまうことから動き出します。ただし! ここ重要なのですが、ふたりだけの狭い世界にのめり込んでいくような作品ではありません。
3巻で小田切さんが2人目の魔女として紹介されるまでは、山田くんと白石さんが互いの立場を知っていくという流れですが、ふたりが目指すのは「ごくふつうの楽しい高校生活」であって、能力を使った爛れた生活ではないです(チュッチュしまくってるけど)。
そして小田切さん以外にも、巻が進むと魔女の能力を持った生徒が次々と登場しますが、山田くんが彼女たちにしてあげられることは、やっぱり「ごくふつうの楽しい高校生活」へと引き戻すことなんですね。
ごくふつう、というくくりで語られるような高校生活が送れない、魔女の能力を持った彼女たちや、能力はないけど問題ありだった伊藤さんなどと、すったもんだの末に心が通う瞬間を見届けるのは、なかなかに気持ちのよいものですよ。
付け加えると、「別人の姿になる」はゴールではなくて、導入
元に戻るための話でもない
実は優等生の白石さんにも悩みがあって…
山田くんはぶち切れます
白石さんが救われた瞬間はとてもすがすがしい!
(C)吉河美希/講談社