ついにアニメ化! 松本大洋が描く、ハイスピード卓球青春劇!

公開日:2014/3/10

ピンポン(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:松本大洋 価格:432円

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 「おお! ゆうしゃロトの ちをひくものよ! そなたのくるのをまっておったぞ」
ラダトーム王のこのセリフで『勇者の物語』は始まります。記念すべきドラゴンクエスト第1作目のお話であります。ヒーローは生まれながらにしてヒーローになる宿命ですが、彼はこの宿命をどんな思いで背負っているのでしょうか。『ドラゴンクエスト(1)』では特に過去は語られませんし、最初から勇者として戦う姿勢です。主人公にはセリフもほとんどありませんから(エンディングでひとことだけありますが)、心中をうかがい知ることはできません。

ふと、彼の背景を(勝手に)想像してみると、なかなか悩ましいこともありそうです。例えば「おれは ゆうしゃに なるんだ!」と幼少から言い続ける、勇ましい親友がいたかもしれません。そんな親友に憧れて、「なりたいけど むりだよな」と思い続けていたかもしれない。自分の未来はせいぜい「ラダトームの おしろへ ようこそ!」という兵士だと思っていた少年が、自分こそがロトの末裔だと分かったら、さぞかし困惑したことでしょう。

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 実に後ろ向きで人間臭い心理ですが、普通の人がそんなことになったら、多くの葛藤を抱えたに違いありません。“自分にチカラがない”と認めるのは大変ツライことですが、“自分にチカラがある”と認めるのも、きっと同じくらいツライのです。

 本作『ピンポン』では、ある種そういった2人の葛藤を感じます。奔放で破天荒、「この星のイチバンになる」が口ぐせのペコ(星野)と、寡黙で理智的、いつだって冷静なスマイル(月本)は幼なじみ。2人はいつも一緒で、卓球に打ち込みます。自由で力強いペコは、スマイルにとって親友であり、憧れのヒーローでした。

 しかし、気がつけばスマイルの実力はペコを追い越していました。ペコがヒーローで在り続けるには、争いや面倒を避けるためには、自分が強くてはいけない。憧れはいつしか、スマイルを無意識に負けさせる方向へと作用します。一方ペコはペコで、上には上がいるということを中々認められず、悶々とします。

 ダイナミックな試合シーンと繊細な葛藤のコントラストは、まさに金字塔。シンプルでパワフルな、スポーツマンガの王道ですが、白みの強い独特の絵柄もあって、暑苦しさはマイルドです。

 負けず嫌いの星と勝ち嫌いの月。強さを認めることと、弱さを認めること。対照的な2人の成長には、心揺さぶられること間違いなし。2014年4月より始まるテレビアニメ『ピンポン THE ANIMATION』も今から非常に楽しみです!


躍動感バツグンの試合シーン

小学生時代、スマイルはペコに卓球へ誘われます

ペコに憧れる思いで卓球へのめりこむスマイル

気がつけば、スマイルはペコの先へ…
(C)松本大洋/小学館