思い出を振り返りたくなる、感性と記憶の物語-『パイロットフィッシュ』

小説・エッセイ

更新日:2011/10/28

パイロットフィッシュ

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:大崎善生 価格:483円

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■パイロットフィッシュ/大崎善生/角川書店

山崎あてに、真夜中に突然思いがけない相手から電話がかかってくる。それはかつての恋人、由希子だった。19年ぶりに二人は会う約束をする…。

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この作品を読んでいて、若かった頃のほろ苦い記憶が次々に蘇ってきました。そして無性に当時に戻りたくなりました。あの時あんな言葉をかけなければ、きっと今頃こんなことにはなってなかったかもしれない…。そんな後悔が、あまりにも多かったので。

特に10代の頃、ふとした言葉がきっかけで疎遠になってしまった人たちが一体何人いたことか。その場の感情に流されて崩れてしまった関係は、結局その後も元通りになることはありませんでした。素直に心を開いていれば、修復できたものもあったと思うんですけど…。由希子が上がり始めた梯子をそのまま上がり続けてしまったように、私もひたすらまっすぐ上がってしまいました。脇目も振らずに、ただ夢中で。今ならきっと、振り返りながら上がることもできるんでしょうけどね。

冒頭部分にある、一度巡り合った人とは二度と別れることはできない、という言葉が、とても心に響きました。たとえ二度と会うことはなくても、記憶の中にはずっと住み続けますものね…。もちろん日々の生活に追われていく中で記憶の片隅に放り出されてしまうことはありますけれど、ふとした瞬間に思い出したりしますし。こういう記憶って、ひょっとしたら一生持ち続けるのかもしれないなぁ…なんて、しみじみ思ってしまいました。


私も通行人を数えたことありますけど、さすがにここまで数えたことはないですね(笑)

私は一体いくつの殻を脱ぎ捨てたんだろう…と、しみじみしてしまったページです

自分はいつから記憶の集合体になったのかなぁ…と、考えさせられたページです