明治の文豪 meets 美少女写真集! で気軽に文学入門
更新日:2012/3/2
物語の主人公・杉田は37歳、猫背でひげ面の冴えない中年男である。毎朝、電車で神田の雑誌社まで通っている彼の楽しみは、同じ車輌に乗りあわせた少女たちの姿をまじまじと鑑賞することだった。杉田は周囲に怪しまれない位置に陣取ると、少女の化粧や着物や顔のつくりを、それこそ舐めるように堪能する。道行く少女に強いあこがれを抱くのが、この杉田という男の「病」なのだ。
まあ、このくらいならそうそう珍しい話ではないかもしれない。通りすがりの相手に淡い憧れを抱いた経験は、きっと誰しも覚えがあるだろう。アプリに解説を寄せた精神科医の和田秀樹氏も「異常心理というより人間心理の永遠のテーマ」と述べている。しかし、である。そっと少女の髪の匂いをかいだり、お気に入りの少女が結婚する日を想像して怒ったり、見ず知らずの女性を自宅まで尾行したりするのだから(それはやっちゃダメ!)、この杉田という男、なかなかに油断がならない。
そんな杉田を見て、友人たちはヒソヒソと噂する。あいつはどこか欠陥があるんじゃないか、若いときに「ひとりであまり身を傷つけたから」(どんな意味かは想像にお任せします)心身のバランスがちぐはぐになってしまったんじゃないか、などと失礼な邪推までする始末だ。
さて、杉田は妻子ある身でありながら、少女の白い腕に抱かれることを心から願っていた。もし美しい少女の腕で抱きしめられたら、「濁った血が新しく」なり、ふたたび人生の希望をとりもどせるはずだ、と考えているのだ。悩める中年・杉田の願いははたして叶えられるのか――!?
このなんとも奇妙な物語を描いたのは、「蒲団」で知られる明治の文豪・田山花袋である。 本アプリ『少女病』には、花袋の作品テキストとともに、写真家・藤牧徹也によるフェティッシュな味わいのグラビアが多数収録されており、あたかも美少女写真集を眺めるような感覚で、文豪の作品に触れることができる。こういう形で明治文学の世界が身近に感じられるのも、電子書籍の面白いところだろう。妖しいストーリーに興味をもった人はもちろん、夏休みの読書感想文に困っている学生さんにもお薦めしたい。内容は妖しくても押しも押されぬ文豪の作品、先生もきっと文句をいわないはずだ。
ただし、艶めかしい写真が画面いっぱいに表示されるので、人目のある場所での閲覧には要注意。少女病患者だと陰口を叩かれないように、お部屋でこっそり鑑賞しましょう。
扉ページ。モデルは映画や雑誌で活躍中の高田理穂さん
本文ページはスッキリ。難読語にはフリガナがあり安心
つまり、こういう写真がたくさん収録されているわけなんです
知らない言葉はネットで検索
キーワード検索、もくじ、しおり機能などはもちろん装備