数えるたびに“自分という奇跡”に出逢う。おくりびとが物語る♪ いのちの紙芝居

小説・エッセイ

更新日:2012/3/2

いのちのかぞえかた

ハード : iPad 発売元 : Chikura Shobo Co.
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:700円

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人は生涯で、何人の人と恋に落ちるのでしょう?
何時間笑い、何粒の涙を流し、何時間キスをし、
死ぬまでに、何回、愛の営みを行うのでしょう?

優しいメロディー♪で物語る薫堂さんの紙芝居。
ページ毎に巡り合う普段意識しない人生の数字。
そんな日常を、数えてみるとアラッ不思議!
“自分という奇跡”が、俄然、輝きだします。

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「生後3カ月でママのおっぱいを92L飲みます」
「1才までに、140Lのよだれをたらし、生涯、
おしっこは4万3800リットルをします」。
「生きているうちの16か月を泣くために費やし、
一生分の涙は190万粒を数えます」。

紙芝居を見て改めて思うのは、
私たちの命は、水にすごく祝福されていること(;)。
「地球上では、毎晩2億人以上の男女が、
愛の営みを行っています」
「1回あたりの精子の数は5億個。
しかしそのほとんどは1時間以内に死んでしまいます」
「精子の寿命は72時間。卵子の寿命は24時間」

紙芝居を見て、改めて気づかされるのは、
私たちの命は、奇跡の確率で成り立っていること(!)
水の惑星=地球は、太陽からの奇跡の距離によって、
蒸発からも氷結からものがれた奇跡の水の湧く星。
その意味では、奇跡の水球と呼んでもいい。

さらに、母なる地球(水球)の母なる海(羊水)から
産まれた人間は、二重の意味“で水球人”だと思う(薫)。
薫堂さんのビショビショ;でキセキ! な数を受けて、
薫(私)さんにも、こんな宇宙観が降臨します;

映画「おくりびと」の脚本家、小山薫堂さんが物語り、
パリを代表する装画家セルジュ・ブロックさんが描く、
こころの奥がぽかぽかする電子紙芝居。
ゆっくりめくると、ゆっくり不思議がやってきます。
じっくり感じると、じっくり有難さがやってきます。
即物、即日、即時の早回し人生を脅迫してくる。
そんな印象を抱かれがちなスマートフォンで、
迂遠、雄大、深淵な大回しの時間を感得できます。

無限の中の有限として、この世におくられた自分。
宇宙の中の有限として、あの世におくられる自分。
小山薫堂さんほどジューシーに、
人生というおくりものを物語るひとはいない。
出産・誕生祝いに是非、味わっていただきたい。

「毎日、地球のどこかで22万人の赤ちゃんが生まれています」。そのうちの一人…あなたは、何故、この時代のこの国のこの世の中に生まれたのでしょう?その奇跡のデビューをしたあなたのことを、「奇跡の主人公」と呼ぶならば、人はみんな「奇跡の主人公」。「この世に奇跡なんかありゃしない」と嘆く現代人その人(私)こそが「奇跡」です(笑)

二足歩行に移行するまで要する距離。120㎞。このハイハイの距離と時間に、四足歩行時代の獣の感性と記憶を身体に刻印して、赤ちゃんは立ち上がるのでしょう。その過ごし方しだいで、草食系と肉食系がかわるのかもしれません…

装画家セルジュ・ブロックさんの絵は、優しい素材感でいっぱいです。電子なのに紙のような物語。まさに電子紙芝居の幕開けです

人は生涯の内、38トンの食べ物をし、例えば、6頭の牛を平らげます。「いただきます」とは、「命をいただきます」の意味。命は命を食べて命を次の命につないでいます

人は何故、涙をこんなに流すのでしょうか?きっとそれは、感情を一人だけに貯めないためだと思います。水流も血流も金流も、溜めるとよいことはありません