深海本の決定版。これを読まずして深海は語れない

更新日:2012/2/3

深海のとっても変わった生きもの

ハード : iPad 発売元 : 株式会社幻冬舎/GENTOSHA INC.
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:1,200円

※最新の価格はストアでご確認ください。

最近にわかに脚光を浴びている、深海に生息するかわった生きもの達。奇想天外な色や形が見るものを楽しませるためか、この本だけでなく多くのメディアに登場するようになった。

でもちょっと待ってほしい。それらは本当に彼らの面白さを伝えているの? と大学院で一研究者として深海生物相手に四苦八苦している僕は思うのである。

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確かに奇妙な姿かたちは万人にとって面白い。でも、本当に面白いのは彼らの特異な生態のほうだ。全ての生物のエネルギーの源となっているのは光合成をする植物であって、その素となるのは太陽の光。光が届かない深海では餌はない。つい最近までたくさんの種類の生物が深海で生きていることなど、誰も信じていなかったのだ。

ではなぜ、深海には変わった生物がたくさん暮らしているのか、いや暮らせているのか。それらの疑問は本書を読むことで立ちどころに解決する。何しろこの本を執筆しているのは、深海生物相手に20年も研究を続けて、しかも「この本を読む人にみな、深海生物の面白さを分かってほしい」と願う研究者。

本当の面白さをわかってほしいからこそ、学者目線ではない平易な表現や写真、わかりやすい解説で深海の生物達の生態が語られている。それでいて、学者だからこそ譲れない学術的な中身もこの本にはぎゅっと凝縮されて詰まっている。そこに一切の妥協はない。

電子書籍ならではの仕掛けがまた心憎く、ぜひ電子書籍媒体で”面白さ”を体感してほしい。

実は表紙は2パターン。左は普通の書籍版。右は深海に潜っていくことで、徐々に色々な深海生物と出会える形式になっている

深海に潜る操作画面。簡単操作がうれしい

実際に深海に潜っていく様子。右上には現在の深度とその深度の豆知識。”7m”は一般成人男性の素潜り限界らしい

本当によくできているのが、深海に潜れば潜るほど光の量が減っていくこと。真っ暗な深海の中で、生物を見つけた喜びといったらない

単なる写真集で終わらない、生物たちの生態の説明。深海のエビ、カニがなぜ赤色なのかというこの説明だけで、作者の本気度がわかるというもの