圧倒的な海の存在感と生命力に五感がグラグラと揺さぶられる心地よい感動!
公開日:2012/3/2
海獣の子供 (1)
ハード : PC/iPhone/iPad/Android | 発売元 : 小学館 |
ジャンル:コミック | 購入元:eBookJapan |
著者名:五十嵐大介 | 価格:540円 |
※最新の価格はストアでご確認ください。 |
画力と独特な、本当に独特で圧倒的な世界観に魅了されるファンがじわじわと増殖中の、海の物語を描いたマンガ。思考停止といわれるかもしれませんが、正直1巻を読んだだけでは、「すごい」の言葉くらいしか出てきません。もうちょっと頑張って言葉をひねり出してみましょうか。「ふしぎ」「体験したことがない感覚」「なぜか目が離せない」「アートだ!」…映画や音楽のレビューなどでよくあるような、使い古された表現ですねハイ。
作者初の長編作品にして、第38回日本漫画家協会賞優秀賞、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作品。いや納得ですよ。
簡単にあらすじを。
――主人公は、女子中学生の琉花。ハンドボール部所属。運動神経は高いが、人付き合いが下手で、部活中にトラブルを起こし、顧問から夏休み中の部活中止を言い渡される。やり場のない思いを胸に、琉花はシューズを買うためのお金であれよあれよと東京へ。夜の海で出会った少年は海の生物と交感する力を持っており、名前を「海」と言った――
読んでみると、どこか哲学的で、つかみ所のない物語のようにも思えます。ただ、はっきりと分かるのは、絵が生きていること。線が一本一本、躍動している。
海の描写を中心に、海が持つ透明感・不気味さ・内包されたエネルギー・不条理感などが混ざり合ったドロドロとした生命力に、多くの読者は圧倒されるようです。というか実際、自分も「こんなマンガがあったのか」「マンガの可能性ヤバイ」などと面食らいました。理解するより感じろ、みたいな名言ってありましたよね。
今、特に保育所や幼稚園、小学校では、体験学習的な学びが重視されています。机上の学びだけでなく、実際に自分の目で見て、耳で聞いて、触れて、嗅いで、味わって、自分の内に入れるのが目的です。これにより、学んだ知識や知恵を生きたものにしよう、という狙いです。将来を生きる力に繋がるわけですね。
マンガは、とかく「見るもの」「平面なもの」と捉えられがちですが、本作のように五感を揺さぶられる作品は確実にあって、子どもたちの生きた知識・知恵になっている、ということは、なんというか…子を持つ親としては嬉しいことです。
ぜひ本作で、独特な夏の空気と海の存在感・生命力に酔ってみてください。
「海のはなしをしよう。」ここから壮大な海の世界が広がっていく
海の中には星空があり…
そして海底にいたのは…
どこかの水族館で見たような巨大水槽。なんというかスペクタクル
部活中、琉花はトラブルを起こし、夏休み中の部活中止に
夜、東京の海で出会った少年は… (C)五十嵐大介/小学館