信頼と利息の果てに、その天秤はどちらに傾くのか

公開日:2012/5/19

ヴェニスの商人 -まんがで読破-

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : イースト・プレス
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:シェイクスピア企画・漫画 価格:400円

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シェイクスピアの描く、商売人の鉄則と恋物語のバランスがとても良い作品です。時代背景は大航海時代真っ只中な感じなので、やはり交易を題材にするというのは必然といえたかもしれませんね。

しかし冒頭からユダヤ人の高利貸しを敵役に抜擢しているあたり、もう既にこの頃から資本主義とユダヤ人との因果関係を見抜いていたのかもしれませんね。

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商才に長けたユダヤは金融とは切っても切れない存在のなので、そのあたりは「まんがで読破シリーズ」においての「資本論」や「共産党宣言」に通じるものがあるかもしれません。それだけに「お金と担保と信頼」の関係性に人間の愛憎を織り交ぜ、見事なまでの悲喜劇に昇華されています。

主人公のアントーニオは友人のために、ユダヤ人の高利貸しからお金を借りるところから始まるのですが、ユダヤ人は何かと嫌われていたのでアントーニオなどに恨みを抱いていました。ここで案の定、アントーニオがユダヤ人への返済の目処が立たなくなってしまうのですが、そこで裁判にかけられてしまうのです。ユダヤ人は死をもって償うことを望みましたが、アントーニオの友人の助力やその恋人たちの助太刀もあってなんとか難を逃れることができました。

これでめでたしめでたしとなるのですが、このイタリアを舞台にした物語は、商業都市だけあって金銭関係のルールには厳格な縛りがあって、それが物語をとてもおもしろくしています。最後の裁判のシーンなんかは「逆転裁判」を彷彿させるような逆転につぐ逆転で、すでにこの頃から逆転裁判的な物語が存在していたことに驚きましたね。

シェイクスピア作品は正直情緒の要素が強くて退屈だなあという印象がある人もいるかもしれませんが、漫画になるととてもすっきりします。これならさくっとシェイクスピア作品を楽しめるので、原作にはちょっと手を出しづらい…という人にもオススメです。


ユダヤの高利貸しは、リスクに敏感である

高利貸し業を罵られ、アントーニオに恨みを抱くユダヤ人

金に困窮した友人を救うべく、アントーニオが保証人に名乗り出る

商業裁判にてユダヤ人は酷な罪状を要求する

そして決行のとき、アントーニオに審判が下る (C)バラエティ・アートワークス/イースト・プレス