「生きる」ことの根源を問う究極サバイバルアドベンチャー

更新日:2015/10/5

自殺島 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 白泉社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:森恒二 価格:555円

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生きる意志を放棄したセイは、目が覚めると政府の手によって絶海の孤島に運ばれていた。「自殺島」と呼ばれる島だった。同じように「自殺島」へ送り込まれた何人もの自殺志願者たちとともに、目の前で飛び降り自殺しては醜く苦痛に満ちた死を遂げる人間を見て、死ぬに死ねなくなり、「生きるしかない」と思う。きびしいサバイバル生活が始まる。

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どんなに死をのぞんでいるものでも、いざ死ねる瞬間や、他人の醜い死の姿を見せられたら、尻込みして生きていることを選ぶものだ。というような浅はかな人生観がこの作品で述べられているわけでは決してない。

ひとつは、「自殺」と「死」の問題がある。自殺は意思の問題だが、死は体の問題である。自殺では、好きなシャツを選ぶように、好きな音楽を選ぶように、趣味に合わせてどのようなスタイルをチョイスすることも可能だ。手首を切っても、薬を頬張っても、ひとりぼっちで安逸に消えていく夢想をすることができるし、また自由だ。けれど死は体に直接やってくるのでスタイルを選ぶことはできない。「死」と「自殺」は断絶しているのだ、っつうようなことを最初の十数ページに私は読んだのだが理屈に走っただろうか。

やがてセイは仲間を離れて、弓を片手に狩りに出かける。かつて見かけた野生の鹿たちの、全身から放たれていた崇高な光を撃ちに。その崇高さとは、自然の中になだらかに溶け込む命の光のことだ。セイたちの抱いている究極の疑問、「何のために」生きるかを超越した「ただ生きている」生き物を、食料として「狩る」ことで、自分もそのなだらかさの世界に入るため。

この時読者の手元にやってくるのは、「生の実感」以外のなにものでもない。その意味では、「生きていること」と「生きる」こともまた断絶しているのかもしれない。


セイは生きる権利を捨てた

目覚めるとそこは孤島だった

無残な死を目撃する

彼らは集団サバイバル生活を始めた

セイは弓を手作りしひとり狩りに出かける
(C)森恒二/白泉社