ドラマ放送中『レッドブルー』、波切敦が描く総合格闘技“MMA”の世界。主人公が天才になってはいけない理由は?【インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2025/1/21

寝技で魅せる! 濃密な試合描写の裏側

――濃密な試合描写について伺わせてください。青葉がグラップラーであることから、派手な立ち技よりも寝技がメインで試合が展開されていきますが、描く上で意識されていることはありますか?

波切:わかりやすく描く、でしょうか。例えば、寝技はどう動いているのかが伝わるようコマ送りみたいにして描いています。

――青葉の寝技をくらった相手の心情表現も秀逸ですよね。「沼から抜け出せない…沼。」というシーンでは、波切先生も実際にくらったことがあるのでは? と思ってしまうほどです。

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波切:くらったことはないです(笑)。格闘技どころか運動すら全くやってこなかったので。そういった演出に関しては、青葉が暗くて陰湿なタイプだから“沼”が合うだろうな……とか、青葉の性質と相手の置かれている状況をあわせて想像しながら描いています。

( 5巻/第42話より)

――本作を描くにあたって取材を行うこともあるかと思いますが、取材で吸収したものを作品に落とし込む際、描くものと描かないものの線引きはありますか?

波切:実は7巻までは取材をしたことがなくて、ずっとYouTubeに上がっている試合動画や、人形を駆使して描いていました。

――そうなんですか!? 7巻といえば「MMA甲子園」本戦が佳境に入り、もうすぐ決勝というタイミングですよね。驚きです。

波切:MMAの基本的な情報や技に関しては、ネットで調べれば色々と出てくるのですが、試合の組まれ方や、プロになる方法については、実際にその道を経験された方にお話を伺わないと描けないなと。それで、作中に登場する「MMA甲子園」が現実の大会として開催されることが決定した際、九州支部長を務めてくださった田村ヒビキさんに取材をさせていただきました。

 取材で見聞きしたものを描く、描かないの線引きでいうと、一度詳しく描いたものは次回から省略する……とかでしょうか。例えば、減量シーンは本当なら毎回行われていることなのですが、一度は細かく描いたので以降はあえてカットして、早めに試合シーンを見せるようにしています。試合前の会見も同様の理由でカットすることが多いのですが、もしもドラマが作れそうだったらあえて入れて、一悶着起こしたりしていますね。

国産の格闘技ドラマを自家発電できる嬉しさ

――ここからは、現在放送中のドラマ『レッドブルー』についてお伺いします。ドラマ化が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

波切:昔、森恒二先生原作のドラマ『ホーリーランド』が大好きでよく見ていたので、俺たちのホーリーランドが始まるぞ! みたいな感じで(笑)。今の時代に、国産の格闘技ドラマを自家発電できるという嬉しい気持ちがありました。

――MMAがテレビドラマになるのは史上初だそうですね。実際に出来上がったドラマをご覧になっていかがでしたか。

波切:「シャークジム」のロゴや壁のポスターなど、細かいところを漫画通りに再現してくださっていてテンションが上がりました。あと、ドラマでは漫画のギャグを控えめにしてシリアスめに仕上げてくださっていたところが良かったなと。やっぱり漫画とドラマは別物で、漫画のギャグをそのままドラマでやってしまうと逆に冷めてしまうこともありますし……。ギャグを控えめにしたことで、青葉の気持ち悪さも一層際立っていたように思います。

――ちょうど2話(※)が放送されたばかりですが、今後見るのが楽しみなシーンはありますか?(※取材当時)

波切:やっぱり飛びつき三角絞めですかね。もちろん寝技全般も楽しみですし……。そういえば試写会に行った際、玉松役の山下永玖さんが「格闘技の作品をやりたかった!」と2回くらい仰っていて、この作品を描いて良かったなと。なので個人的には玉松に注目しています(笑)。あと、岩瀬役の長谷川慎さん、鉢屋役の須見和馬さんは今回のために髪型をチェンジしてくださったようで、みなさんが精一杯役に寄せてくださっていて本当にありがたいです。

――ドラマ化によって一層作品が盛り上がっている最中ではありますが、最後に本作を通じて作家として実現したい夢がありましたら教えてください。

波切:まずは『レッドブルー』を無事に完結させたいです。そして、もともと格闘技を見るのが好きなので、本作をきっかけに競技人口が活性化して、さらに強い選手が増えて、年末の「RIZIN」がさらに面白くなったら嬉しいですね。

取材・文=ちゃんめい、撮影=金澤正平

サンデーうぇぶりで『レッドブルー』を読む

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