恋愛、友情、人間関係…高校時代のままならない感情をリアルに描いた、悩める4人の青春混線ストーリー『氷の城壁』
PR 公開日:2025/2/4

……分かる。分かりすぎて最後まで感情が揺さぶられっぱなしだった。自分の内面を知られるのが怖くて、でも一人にはなりたくなくて。それなのに上手く気持ちを言葉にできず素直になれない自分――。漫画『氷の城壁』(阿賀沢紅茶/集英社)は、高校生というそんな多感な時期に誰もが持っていた気持ちを思い出させる、ちょっとこじれた4人の高校生の友情と恋愛を描く青春混線ストーリーだ。
2025年2月4日に最終の第14巻が発売し、第1巻から追いかけてきたファンは4人の成長に感慨深くなりジーンとなることだろう。そして未読の人はぜひとも手に取ってほしい。本作には、青春時代を過ごした私たちには身に覚えがありすぎる心情や思考、そして体験が、胸が苦しくなるほどリアルに描き出されているからだ。
主人公は、人と接するのが苦手で他人との間に壁を作りがちな氷川小雪。高校で誰とも関わりを持たずに過ごしていた小雪は、高校1年生の秋、ひょんなことから距離ナシ男子・雨宮ミナトと知り合う。グイグイ距離を縮めてくるミナトに戸惑う小雪だが、小雪の幼馴染で学校の人気者・美姫と、のんびりとした雰囲気の優しいヨータも合わせて、次第に4人でつるむようになっていく。そして高校2年生になると、4人は同じクラスになってさらに距離を縮めていく。ヨータから「美姫が好きだ」と打ち明けられた小雪はその恋を応援するが、ヨータの気持ちに全く気づかない美姫は仲良く話す小雪たちをいい感じなのだと思い込むし、小雪のことが気になるミナトも「小雪はヨータのことが好きなのでは」と勘違いしモヤモヤする。さらに小雪の中学時代の元カレや、ミナトに好意を寄せる後輩女子が現れ、みんなの思いはどんどん混線していく……。
読み始める前は、他人と上手くコミュニケーションを取れない女子がモテモテ男子と付き合うことになるラブストーリーだと思っていたが、まるで違った。描かれているのは夢のようなキラキラした恋愛ではないし、恋愛のことばかりが描かれるわけでもない。「こんな青春してみたかった」というよりは「こういうこと、あるある」と思わされる日常が描かれている。ごく普通の学校生活の中で、高校生の男女が友情を育むさまはそれだけで尊い。そして彼らはいつの間にか芽生えた恋心に困惑し、それを持て余す。そんな等身大の姿が描かれているからこそ心動かされるのだ。
しかも、主人公はもちろん、ちょっと鼻につくキャラも含めて、すべての登場人物の気持ちに共感できるから驚く。中学時代に受けた冷やかしや嫌がらせや、周囲から感じた同調圧力、上手くいかなかった幼い恋愛、両親の離婚と再婚。彼らの性格を形作った背景も含めて心の機微、そして「いつ、どうしてあの人を好きになったか」という理由や過程までもが丁寧に描かれ、その苦しみや悩ましさがリアルだからこそ本当にもどかしい。過去の経験から臆病になっている高校生たちは傷つきたくないがために、そして大切な人を失いたくないために、いつだって言葉足らずだ。「ちゃんと素直に自分の思いを伝えればいいだけなのに」なんて思うけれど、そのままならなさは思い当たる節がある。
ああ、読んだだけで青春時代に戻った気分だ。友達同士でくだらない話をする楽しさも、恋に自覚した時の心はふわつくのに胸がつまって泣きたくなるような気持ちも、それが上手くいかない時の途方もない絶望感も、思いが通じた時のこの上ない幸せも、すべて小雪たちと同じように体感できてしまった。最終巻では小雪とミナトの距離はさらに縮まり、小雪と家族との関係にも変化が起こる。小雪をはじめとする登場人物たちがどんどん表情を変えていく姿も見ものだ。今青春真っ只中にいる人も、青春はとうに過ぎたという人も夢中になること間違いなし。あなたも小雪たちと一緒に、かけがえのないひとときを体験してみませんか。
文=アサトーミナミ
