クラスメイトからの突然の無視。理不尽ないじめをどうやって乗り越えたのか。“10代の時のつらい経験”を描くエピソード集【書評】

マンガ

公開日:2025/2/7

 10代の頃を振り返ると、人間関係や恋愛、部活や学校行事、勉強や進路選択…など、悩みの種はいつも尽きなかった。

 そんな「10代の時の辛かったこと」をどう乗り越えたかのエピソードをSNSで集め、漫画化した作品が『10代の時のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)。赤裸々に綴られた苦悩の数々に、心が揺さぶられる1冊だ。

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 第一話で描かれるのは「ある日学校で無視されるようになった話」。ある日を境に始まった、理由の分からない無視。辛くても学校を休めず、親にもなかなか言い出せなかった葛藤は、身に覚えのある読者も多いかもしれない。「いじめの加害者から被害者になった話」や「つらい時に支えてくれた友達の話」なども、共感できる人が多いのではないだろうか。

 その他にもさまざまな辛かった体験が寄せられている。自分がゲイであることに気がついた男性の、親に打ち明けられない苦しみと、周囲に隠し続ける息苦しい日々。先生と恋をした男子生徒の秘めた想い。両親の不仲による辛さ。自分に似たような経験がなくとも、読んでいて胸が締めつけられる。

 本作はハッピーエンドで終わるフィクションの世界と違って、全ての悩みが綺麗に解決するわけではない。そこがなんともリアルな部分だ。もちろん悩みを乗り越えいい思い出となることもある。だが有耶無耶で終わってしまったり、未だにその傷に悩まされたりするようなお話も。

 人生は全てが思い通りにいくわけではないし、消えない傷を抱えながら生きていかなければならないこともある。そんな生々しくも人間らしい感情の動きに、自分ならどうするだろうかと、没入してしまう。

 10代の多感な日々を生きている人たちには、自身の悩みを乗り越えるヒントにしてほしい。そして、過去に10代だった大人たちにもぜひ読んでもらいたい。過去の自分の経験を振り返り、誰かの剥き出しの心に触れることで、目の前の日々を生きていく力が湧いてくるだろう。

文=ネゴト / fumi

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