カサンドラ症候群で笑えなくなった。発達障害特性の夫との暮らしのなかでの違和感とストレス【書評】
公開日:2025/2/14

カサンドラ症候群という言葉をご存じだろうか。パートナーや家族との感情的なすれ違いにより、孤独感やストレスを抱える状態を指す。特に自閉スペクトラム症(ASD)のパートナーとの関係で起きやすい心理的な状態のことだ。『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(アゴ山:著、鳥頭ゆば:作画/KADOKAWA)は、主人公・アコが夫婦関係のなかでカサンドラ症候群になり、離婚するまでが描かれている。
アコは、夫・ユーマの穏やかで天然、無口でちょっと変なところが好きで結婚した。若干の違和感を持っていたものの、妊娠を機にその違和感はさらに大きくなり、アコの心に影を落とす。妊娠が判明したときも、出産して初めて娘を抱いたときも、ユーマはいつも通り無表情だった。生まれた娘は癇癪がひどく、検査の結果、自閉症スペクトラム(ASD)と診断された。それをきっかけにASDについて詳しく調べるほど、ユーマにも当てはまると感じていく。
作中では、ユーマと話が噛み合わないことがきっかけで、アコがカサンドラ症候群になり、だんだん笑えなくなっていく様子が描かれる。具体的には、アコがユーマに「その辺で待っていて」と言うと、ユーマはそのまま真後ろで立ち続けたり、「具合が悪いからお弁当を買ってきて」と頼むと、自分の分しか買ってこなかったりする。ひとつひとつは些細なことかもしれないが、アコが疲弊していく姿に強く胸を締めつけられるだろう。
カサンドラ症候群は、特にASDの人との関係で生じやすい。そのため、気付かないうちにこの症状を抱えている人も多いのではないだろうか。
本作は、カサンドラ症候群について考え、その存在を知るきっかけとなる1冊だろう。