SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第43回「『好き』ってなに?」

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公開日:2025/1/27

 好きの始まりはもちろん純粋に。だからこそ潜りたくなり、潜った先で新たな発見をする。それが更なる好きを呼び、もっともっと深くまで潜るようになる。しかしその深くまで潜った経験はどういうわけか妙な形の自信を生んでしまう。その結果、自分より深く潜っていない人に対して優越感を覚えるようになり、それまでに見てきた先にあったものを「この程度」と思ってしまうようになってしまった。もちろん当時はこんな具体的に思っていないのだが。

 しかし二十代を越え、さらにその奥深くまで潜るようになり、そして自分も音楽にひたむきに打ち込むようになった。結果、その当時の拗れ捩れ捻れに気がつき、実に浅ましくなんとも香ばしかった自分に気が付くことができた。

 学生の時分、ボクシングを始めて三カ月目くらいに「あれ、俺まじ強いんじゃね?」的な感覚になったことがある。あれに似ているよね。その後割と長いこと続けるのだが、やればやるほど身の程を知り、絶対に調子に乗ったらいけないことに気がつく感じというか。

 そんな経験があるから「好き」と思うものに対して誠実でありたいと思うようになった。「好き」は「好き」以外の何ものでもなく、歴や度合い、ましてや知識の量なんかで語れるものではないと、遅ればせながら気が付けた。劣等感とか優越感とか「好き」にはマジで必要ない。歴史的に価値があるとか、誰かが評価をしているとか、流行ってるとか、もうホント全然要らない。

 おかげで私は、純粋に、そしてフラットに「好き」と言えるようになった。自身の経験からしか物事の判断を下すことができない私は、このような遍歴がないと、本質的に気が付くことができなかったと思う。だから、自分にとっての恥ずかしい歴史や、香ばしい時期も今となっては宝物。

 つまりは誰かの「好き」はあんまり馬鹿にしたらいけない。いつから好きだとか、造詣が深いとかは個人の財産だから、他人に対してマウント取る材料じゃないのよ。まアそもそも個人の「好き」は、誰に何を言われようと決して侵されるようなもんじゃないんだけどね。

 そこらへん自戒の念として、これからも胸の真ん中らへんに置いておきたいな。

 度々、いろんな場面(飲み会とか主に)で妖怪「好き拗らせ」に遭遇する。姿形はそれぞれで、アプローチスタイルもまちまち。ただ残念なことに現代のテクノロジーを駆使しても彼らを撃退する術はない。打撃も毒も効かないから諦めた方がいい。ただね、あれはもういにしえからのエンタメだから、彼らの話をニコニコ聞いて、抜群のタイミングで頷き続けながらキメどころで「まじウケる」って心の中で言うと、音ゲーみたいで楽しいからやってみて。

 あと、帰り道に一人になったら一連の出来事を総ざらいし、顎なんて撫でながら「香ばしかったなア」って独りごちると、コクが出るからこれも合わせてやってみて。

<第44回に続く>

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中