「割愛」=「省略」ではない! 違いや使い方は?/毎日雑学

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公開日:2025/3/13

「時間の関係で説明は割愛させていただきます」は正しい?


 よく聞く言葉ですが、これは正しい使い方ではありません。「割愛」は元々仏教用語で「人や物事に対する愛着を断ち切る」ことをいいます。鎌倉時代の仏教説話集「沙石集」にある「割愛出家の沙門、何ぞ世財をあらそはん」という歌からも「世俗への愛着を断ち切って出家した」ことがわかります。「割」と「愛」という漢字をみても、説明などを単に省略する場合には使わないことが想像できますね。

 説明の場合は、「時間の関係で説明は省略させていただきます」「…次回とさせていただきます」が正しい言い方です。文化庁の国語に関する世論調査でも65%の人が誤用しているとのこと。「割愛」と「省略」の違いや使い方をまとめてみましょう。(大辞泉より)

「割愛」は「惜しいと思うものを思い切って捨てたり、手放したりすること」
「省略」は「はぶいて簡単にすること」

 この意味からも「割愛」の使い方としては、「たくさんのご意見をありがとうございます。残念ですがスペースの関係上、一部割愛させていただきます」などのように「残念ですが」「心苦しいのですが」といったクッション言葉をいれることでその思いが伝わります。

文=尾形圭子

尾形圭子

株式会社ヒューマンディスカバリー代表取締役
キャリアカウンセラー/人材育成講師/僧侶
航空会社と企業の人事部門を経て2004年に会社設立。ビジネスマナー、コミュニケーション、クレーム対応などの研修・講演活動を行うほか、福祉事業所や病院でホスピタリティを活かした「寄り添いの接遇」を指導。「言葉に心をのせて」を大切にしている。
著書は「一生使える電話のマナー」(大和出版)「すぐに役立つ大人のマナーブック」(JAグループ出版)など30冊以上。

※提供している情報には諸説ある場合があります。ご了承ください。

<第257回に続く>

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